東京電力のデータによると、福島の汚染水には、放射性物質63種類が含まれている。東京電力は、処理すれば、完全に取り除けない「リチウム」以外に、その他のほとんどの放射性物質は取り除くことができるとしている。
しかし、2020年8月の時点で、多核種除去設備(ALPS)で処理された汚染水の73%に、基準値を超えた放射性物質が残っていた。
その疑惑を受け、東京電力は今年5月末、ALPSで 浄化処理した水からトリチウムを分離する技術を公募した。つまり、汚染水を海に放出するという方針を発表してから2ヶ月近くが経った時点でも、トリチウムを完全に取り除くという予定は全くなかったということで、これは皮肉と言わざるを得ない。
また、東京電力は、汚染水排出前に、放射性物質の濃度を測定する計画はなく、計算だけで、基準を満たしているかを判断する計画だ。「測定には半日から1日かかるため、基準を超えていることが分かった時には既に海に排出されている」というのが東京電力の説明だ。
事故を起こした東京電力はここ10年、反省したり、より良い対応をするよう努力するどころか、隠蔽したり、責任逃れをしたりするばかりで、事態が明るみになってから、仕方なくそれを認めるということを繰り返している。
今年、東京電力は、高濃度の放射性物質が付着したゲル状の塊に関する情報を4月まで公表せず、5月になってようやく、廃棄した吸着材などを保管していた金属製コンテナが腐食し、漏れ出た廃棄物が固まって生じたとする調査結果を発表した。汚染水を排出してはいないものの、塊が雨を受け、放射性物質を含んだ水が排水路に流れ込んだとみられるという。
もし、本当に汚染水が「無害」であるなら、日本はそれを国内で利用することができるはずで、なぜ海に放出しなければならないのだろうか?
■人の噂も七十五日 2年後の計画発表は時間稼ぎ
日本が発表している排出の計画にも、何か含みがあると感じさせられる。今年4月に計画を発表し、2年かけて準備したうえで、2023年から排出を始めるというのだ。