中国科学院天津工業生物技術研究所はこのほど、デンプンの人工合成で重要かつ画期的な進展を遂げ、世界で初めて二酸化炭素(CO2)からデンプンへの一からの合成を実現した。関連研究は24日、国際的な学術誌「サイエンス」に掲載された。
デンプンは現在主に、緑色植物の光合成によるCO2固定で合成されている。トウモロコシなどの農作物には、CO2をデンプンに変える60数ステップの代謝反応及び複雑な生理的調節があり、太陽エネルギーの理論的利用効率は2%を超えない。農作物の栽培は通常数カ月の期間が必要で、大量の土地、淡水、肥料などの資源が使われる。
論文の連絡著者で、同研究所の馬延和所長は、「科学研究者は長期間にわたり、光合成という生命プロセスの改善に取り組み、CO2の転化速度と太陽エネルギーの利用効率を高め、最終的にデンプンの生産効率を上げようとしてきた」と率直に述べた。
この難題を解決するため、同研究所の研究者は11ステップの反応を持つ非自然CO2固定及び人工的デンプン合成の新たな方法を一から設計し、実験室内で初めてCO2からデンプン分子への全合成を実現した。
研究チームは「積み木」のような方法を採用し、中国科学院大連化学物理研究所と協力し、化学触媒により高濃度CO2を高密度水素エネルギーの作用によりC1化合物に還元した後、C1ポリメラーゼを設計・構築することにより、化学糖鎖反応の原理に基づきC1化合物をC3化合物に重合させた。最後に生物学的方法で最適化し、C3化合物をC6化合物に重合させ、さらに直鎖・側鎖デンプン(Cn化合物)を合成した。
論文の筆頭著者で、同研究所の蔡韜副研究員は、「この人工的なデンプン合成の速度はトウモロコシの8.5倍で、自然を設計し、自然を超える目標の達成に向け大きな一歩を踏み出し、新機能の生物システムの構築に向けた新たな科学的基礎を提供した」と述べた。
十分なエネルギー供給の条件下で、現在の技術パラメータに基づき推算すると、1立方メートルの大きさのバイオリアクターのデンプン年間生産量は理論上、中国の0.33ヘクタールの土地でのトウモロコシ栽培の平均的な年間生産量に相当する。この成果はデンプン生産の従来の農業栽培スタイルから工業生産スタイルへの変化を可能にするとともに、CO2を原材料とした複雑な分子の合成に向けた新たなテクノロジー・ロードマップを切り開いた。(編集YF)
「人民網日本語版」2021年9月24日