【独占取材】莫言小説の翻訳者・吉田富夫氏(8)
ノーベル文学賞受賞後の莫言氏へ 「くれぐれも気をつけて」
人民網:今年のノーベル文学賞授賞式に招待され夫人と共に参加した際、莫言氏にどんな言葉をかけたか?
気をつけて。くれぐれも気をつけてと。受賞したことで、莫言氏の社会的地位と名声は大きくなった。社会的責任もますます重くなっていく。これは1人の文学者にとって必ずしも幸せを持たらすとは限らない。だから一言だけ気をつけてと伝えた。
人民網:莫言氏の実家では、現地の知名度をあげるために、莫言記念館を作りたいと言い出す人も現れている。このような社会的行為は作家にとっていいことだと思うか?
いいことではないが、これは必然的なことだ。避けることは難しいだろうが、できるかぎり避けるべき。これは莫言氏にとって一種の尊重ではあるが、一方で恐らく多くの面倒ももたらす。しかも避けがたい。だからこそ莫言氏には気をつけなければいけないと繰り返し言っている。誰も莫言氏を助けることはできない。莫言氏自身があらゆる手を尽くして自分の文学の王国を守り、高密県東北村の物語を書き続ける必要がある。
人民網:今後も莫言氏の作品を翻訳する計画はあるか?
まだ考えてない。莫言氏の短編はまた違った味があり、まだ日本語に訳していないものも多くある。機会があればぜひそれを訳してみたい。
人民網:文学が好きな若い読者に何かメッセージはあるか?
やはりたくさん本を読むこと。当然、デジタル化は免れないが、書籍はまた違ったツールだ。現代ものでも、古典ものでもいい。中国古典文学は素晴らしい文学の宝庫であり、読まないのは非常にもったいない。莫言氏は外国文学の影響を受けたという人もいるが、個人的には莫言氏はやはり中国古典と昔話の影響を大きく受けていると思う。中国の若い人たちも本をたくさん読むべきだ。書籍とデジタル書籍はまったく別物。書籍は持続可能な文化だ。(編集MZ)
「人民網日本語版」2012年11月27日