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宮本・元駐中国大使を単独取材 関係修復には「冷却期間が必要」 (2)

 質問2 中日両国を取り巻く問題や相手国の状況について、両国メディアの報道に問題はないか。報道のあり方について何かアドバイスは?

 宮本氏 大いに問題がある。日本では、中国は大国となるや傲慢となり、軍事力を急速に強化し、ついにその力を背景に、これまで長い間日本が実効支配をしてきた尖閣諸島(注:中国名・釣魚島)を取りもどしに来た、と多くの人が見ている。だから実効支配を強化する日本政府の立場に対し国民の大きな支持を与えている。中国では、日本は日米同盟を背景に、ついにこれまでの方針を変えて力で実効支配を強化しようとしており、歴史を反省しない軍国主義への危険な動きである、と多くの国民が見ている。だから中国国民も中国政府の対抗措置を支持している。私に言わせれば、お互いの相手国に対する見方は、ともに間違っている。そういう見方に導いた責任の多くを、双方のマスコミは負わなければならない。双方のマスコミは、個々の現象に目を奪われるのではなく、多くの観点を踏まえて、総合的、客観的、理性的に掘り下げた報道に心がけてほしい。

 質問3 一衣帯水の隣国である日本と中国は、文化的に多くの共通点があるが、国民間の心の距離はなかなか縮まらず、相互理解が不足している。その要因は何だと考えるか。どのように両国の民間交流を深めるべきか。

 宮本氏 現在、日中双方において、自分の中で相手に対するイメージを作りあげ、そのつくりあげたイメージに対し、お互いに腹を立てている状況にある。このイメージは、断片的な報道やネット上の「お話」に影響されてできる。そして多くの報道や「お話」は、個々の人の好みや、その時の心理状況で取捨選択され、その人が「聞きたいもの」だけが残る。つまり客観的な真実とは大きく食い違う宿命にある。

 私は、日中両国民同士の融和は、抽象的、一般的な日本人論、中国人論ではなく、個々の一人一人の「物語」が相手に届くことにより実現できると考えている。そこには、戦争よりも平和を願い、家族のため、明日のために懸命に学び、働き、不幸に嘆き、幸せに歓喜し、少しでも良い明日を迎えたいと願っている普通の日本人と中国人が見えてくるだろう。そういう人同士で、どうして友人に成れないことがあろうか。必ず心は通い合うものだ。

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