中国経済は戦略的調整の真っ最中 ロシア専門家
今年第2四半期(4-6月)、中国の国内総生産(GDP)増加率が鈍化したことが世界中の注目の的だ。中国経済は衰退に向かっているとみる人もいる。過去数年間に比べれば、7.5%の増加率は確かに低いが、ここ数年の世界のGDP平均増加率よりははるかに高い。私のみたところ、中国経済は今、戦略的調整の真っ最中だといえる。(文:アンドレイ・オストロフスキーロシア科学院極東研究所副所長)
中国経済の増加率が鈍化した原因はさまざまだ。第一に、国際金融危機の後の影響がまだ消え去っていないことだ。中国は対外貿易関係を仕切り直しており、特に米国、日本、欧州連合(EU)といった主要貿易相手先との関係を仕切り直し、新興5カ国や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国への輸出を増やしている。
第二に、ある調査によると、第12次五カ年計画(2011-15年、十二五)の終わり頃、中国の生産年齢人口は減少に転じる。2020年に小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的実現という目標を達成するため、中国は今、新たな経済成長モデルを模索中だ。これには労働者の職業技能レベルの向上や各産業・各業界の生産効率の改善などが含まれる。
第三に、中国自身が経済成長モデルの転換という重要任務に直面しており、大量・安価・非熟練の労働力に頼って成長してきた従来のモデルを早急に書き換える必要がある。
中国は十二五で、第三次産業の付加価値、都市化のレベル、GDPにおける研究開発費用の割合、特許の件数、汚染物質排出量、都市における社会保険のカバー率といった各種の評価指標を強調した。ここからわかることは、中国のこれからの発展目標は「速度より質」だということだ。中国政府は今後、個人所得の増加や都市部住民の社会保障水準の向上に着目するとみられる。
世界銀行のロバート・ゼーリック前総裁がかつて指摘したところによると、中国は発展戦略を改めなければ、「中所得のわな」に陥り、低所得層にかかる経済的な圧力が増大する可能性がある。中国政府は成長モデル変更の必要性を十分に意識しており、今後は内需の拡大、消費の牽引、投資分野の改革などに集中するという。
新たなモデル転換期に、中国市場は新たな位置づけを行い、農村の非熟練労働力をよりどころとして生産コストを引き下げるという状態から、熟練した労働力を育成し、生産力を向上させるという方向へ転換するとみられる。これらはみな人口メリットの低下、高齢化の突出、自然資源の相対的な不足といった問題解決のカギになる。
中国政府は現在、あらゆる機会を利用して、経済成長を安定させ、小康社会の建設を進め、国内市場の拡大を土台として、個人の消費能力を引き上げようとしている。思うに、経済成長ペースの適度な鈍化は中国社会の当面のニーズに応じたものであり、その目的は20年にGDPと都市部住民の平均所得を10年の2倍にするという目標を全力で達成すること、都市部住民により整った社会保障を提供すること、より合理的で秩序ある所得分配方式をうち出すことにある。中国経済「衰退論」は杞憂だといえる。(編集KS)
「人民網日本語版」2013年7月30日