意外にも夢枕獏はこれまでに中国を15回も訪問しており、最も好きな小説は中国の「西遊記」と「搜神記」という。1986年、夢枕獏は陝西省西安市を出発して、唐の時代の中国の訳経僧・玄奘三蔵の足跡をたどって西へ向かい、古跡を探しながら、創作のための資料を収集した。そして、87年と88年には「西遊記」の舞台となった場所をたどり、新疆維吾爾(ウイグル)自治区トルファン市や天山山脈を旅した。
中国の歴史からインスピレーションを得て小説を書き、夢枕獏は非常に多くの人の間で認められる存在になった。夢枕獏の作品は日本の小説界でも、「その実力を十分に発揮できれば、古典作品を書くこともできるだろう」という新たな評価も得ている。
夢枕獏によると、日本人が感じる楊貴妃の美しさは、彼女の悲劇と関係があるという。「悲しみ」があってこそ、美しさが一層引き立つというのだ。加えて、その背後には中国唐の詩人・白居易によって作られた長編漢詩「長恨歌(ちょうごんか)」の存在もある。同作品は平安時代に日本に伝わり、絶対的な名作として日本の学校で漢詩を学ぶ時に紹介される。そして、教師は、「『長恨歌』の全てを暗記すれば、中国の漢詩を理解できる」と生徒に教えている。「僕は今でも『長恨歌』を暗記できていないけど、先生のその言葉はずっと覚えている」と夢枕獏。
「空海―KU-KAI―」は、平安時代初期の僧で、「弘法大師」という呼び名(諡号)で知られる真言宗の開祖である空海(774-835年)が主役。「長恨歌」をベースに、大胆にも李白、高力士、阿倍仲麻呂、白居易、柳宗元、韓愈などの人物を使い、楊貴妃の死をきっかけにして起こる一連の怪奇事件を描いている。作者の宇宙観が存分に発揮され、歴史ファンタジー大作に仕上がっている。(編集KN)
「人民網日本語版」2017年4月18日
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