人のぬくもり
陳屋から出てくると陳屋前朝市があり、日本伝統の漬物や野菜、果物が販売されている。私が生まれ育った町では、家の近くに通りが一本あり、早朝の5時ごろから正午まで、手押し車や露店で新鮮な野菜や安い果物、さらに魚、肉、調味料、乾物などを売っている人でにぎわっていた。子供のころ、私は朝市に行くのが大好きで、値段交渉をしているおばさんや手押し車を引いているおじいさん、カラフルな野菜や果物などが子供だった私の目に次々と飛び込んできたものだ。
一方、高山市の朝市の規模は小さく、数十メートルの通りに、白いテントを張って、テーブルを並べ、きれいな布をひいて、果物や野菜が、値段が書かれたプレートと一緒に整然と並べられている。それらを買うのは、ほとんどが地元の人。観光客はそれを物珍しそうに見ているだけだが、野菜などを売っているおじさんたちは丁寧に対応してくれる。「がっかりして、悲しい時は、野菜市場に行ってみるといい。そこは最も活気のある場所で、たくさんの人がいて、とてもにぎやかだ。食品などの生活必需品のために、忙しく走り回るというのは、人の本来の姿」という言葉を聞いたことがある。
高山市は、日本人にも人気の観光地で、毎年平均300万人の観光客がここを訪れる。懐かしさ漂う古い建築物の魅力とは一体何なのだろうとよく考えることがある。古い町並み残る高山市を歩き、寒空の下で、暖かいスープを通りがかりの人に配っているお店の人を見て、その理由が突然分かったような気がする。実際には、人々が魅力を感じているのは、建築物ではなく、そこにある雰囲気なのだ。歴史情緒ある窓格子や建物にその雰囲気は詰まっており、それが、カバンや花、酒などに乗り移り、最終的に、人と人のつながりを通して人の心に伝えられる。このような雰囲気の中で、人々は時間を逆行させ、古き良き時代へとタイムスリップできるのだ。(編集KN)
「人民網日本語版」2017年5月26日
このウェブサイトの著作権は人民日報社にあります。
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8257
Mail:japan@people.cn