インドが日本の新幹線を選んだのには、経済という側面への考慮もあり、同じように地縁政治という要因もある。インドの中国資本に対する一方的な制限から中国の生産能力プロジェクトに対する疑心暗鬼まで、インドが中国に懸念を抱いていることがうかがえる。新幹線を選び、中国の高速鉄道を選ばなかったのは、インドの地縁政治の傾向による結果だといえる。
これからインドが日本の新幹線を選ぶか、中国の高速鉄道を選ぶか、あるいは中国のように独自の知的財産権を備えた高速鉄道技術を生み出すかが注視される。確実なのは、遅れたインフラ建設、分断された地方ごとの利益による制約、動揺する不安定な国内情勢により、インドはまだしばらくの間は海外の高速鉄道技術や生産能力プロジェクトを導入せざるを得ないということだ。中日の高速鉄道プロジェクト争奪戦は、インドでは日本が先んじたが、これは中国に技術や生産能力の優位性がないことを意味しない。インドの政治的指向の結果だ。
AAGCは日本とインドが共同出資した(日本は39億ドル、インドは10億ドル。1ドルは約111.4円)もので、狙いは「経済回廊」を構築することにあり、対象地域はアフリカ西東の海岸エリアから西インド洋エリアまでの各国だ。この日印主導の「経済回廊」では、主に関連国とともにインフラ建設、生産能力プロジェクト、人材資源などパッケージ型協力を進めるという。
このプロジェクトの範囲は「一帯一路」(the Belt and Road)イニシアティブよりかなり小さいが、地域と協力プロジェクトの内容は重なる部分が多い。日本とインドが独立した動きをみせ、両国主導のAAGCを打ち出したのは、中国の「一帯一路」建設との主導権争いにほかならない。一方、今年5月に北京で初めて開催された「一帯一路」国際協力サミットフォーラムで、インドは代表を派遣しなかった唯一の参加国になった。日本は代表こそ派遣したが、「一帯一路」イニシアティブには参加せず、参加の条件をつり上げては結論を先延ばしにしている。
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