第55回ミュンヘン安全保障会議が17日、閉幕した。楊潔篪中共中央政治局委員(中央外事活動委員会弁公室主任)が基調演説「国際協力を提唱し、多国間主義を維持し、人類運命共同体の構築を後押しする」で示した中国側の立場は、出席者の称賛を得た。新華社が伝えた。
大国間の競争と摩擦が顕在化し、一国主義と保護主義が国際情勢の不確定性を大幅に高めている現在、多国間主義を維持し、国際協力を推進し、グローバル・ガバナンスを整備することが、国際社会共通の責任になっていると評論家は指摘する。
■大国間競争が激化
会議開幕前に発表された安全保障報告は「世界は大国間競争の時代に戻る恐れがある」と警告した。ロシアと西側との関係は過去1年で悪化し続け、大国間競争激化の典型的ケースとなっている。
英国のウィリアムソン国防相は会議で、西側に軍拡競争を強要しているとロシアを非難した。米国のペンス副大統領は、サイバー攻撃、デマ、秘密行動を利用して西側の安定を破壊しているとロシアを非難した。
これに対してロシアのラブロフ外相はウィリアムソン国防相を「戦争大臣」と呼んだうえ、自国の意志を他国に強要し、世界の貿易体制を脅かし、世界に大きな不安を抱かせていると米国を非難した。
ロシア現代発展研究所のIgor Yurgens所長は新華社の取材に「現在、ロシアと西側の間では外交的手段が役割を果しておらず、相互信頼と言えるものは全くない。シリア、ベネズエラ、中距離核戦力(INF)全廃条約などの問題でも双方は真っ向から対立しているうえ、現時点で関係緩和の方法はほぼない」と述べた。
ロシアと西側との間で緊張が高まり続けていることについて、アレキサンダー・バーシュボウ元NATO事務次長は「ロシアと西側との間では戦略競争の態勢がすでに形成されている」と指摘した。
■米国が再び一国主義的発言
ミュンヘン安全保障会議で米高官は再び一国主義的発言をぶち上げ、EU各国に不満を引き起こした。
ペンス副大統領は英仏独に対して、米国に従ってイラン核合意から離脱するよう求めたうえ、米国の対イラン制裁を破壊するなと警告。
この発言にドイツのメルケル首相は「まさにイラン核合意をめぐる摩擦が欧米を再度分裂させている」と指摘。イラン核合意の維持を呼びかけたほか、世界の一国主義的傾向に警鐘を鳴らした。
米欧間の不和の激化は米国が一国主義を堅持していることと関係があると評論家は指摘する。一国主義、孤立主義、保護貿易主義は世界全体を不安に陥れている。こうした傾向の高まりは現在、国際秩序を深刻に脅かしている。
■多国間主義が今も主流
ミュンヘン安全保障会議は国際政治・安全保障情勢の変遷の証人となってきた。国際秩序の中で一国主義の傾向が強まっているが、今も主流は多国間主義だ。
エジプトのシシ大統領は中東問題を解決するために多国間協力を呼びかけた。メルケル首相も移民・難民問題解決のために多国間協力を呼びかけた。ラガルドIMF専務理事も貿易紛争解決のために多国間協力を呼びかけた。
フィンランドのニーニスト大統領は新華社の取材に「世界的に不安定性が高まり、多国間主義は逆流に遭遇しているが、幸いなことに今回の会議では多国間主義を支持する声が高まった」と指摘した。
ミュンヘン安全保障会議のヴォルフガング・イッシンガー議長は閉幕の辞で「現在、国連中心の国際秩序は試練に直面している。国際社会には国際ルールシステムの整備を推し進め、全人類により良い安全保障を提供するという共通の機会と責任がある」と述べた。
楊氏は演説で「多国間主義の提唱と実行は、世界の圧倒的多数の国々の共通の選択だ。国際協力が時代の潮流であり、多国間主義が世の正しい道であり、人類運命共同体の構築が大勢の赴くところであることは事実が証明している」と述べた。
バーシュボウ氏は「世界的問題への関与を通じて、中国はすでに世界の安全保障ガバナンスへの貢献者となった」と指摘した。
ニーニスト大統領は「国際社会との気候変動対策協力は、中国が多国間主義を支持していることの良い例証だ」と述べた。(編集NA)
「人民網日本語版」2019年2月19日
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