AI時代の外国語教育 その苦悩と模索(八)

人民網日本語版 2019年03月20日09:13

人民網ではこのほど、「AI時代の外国語教育 その苦悩と模索」をテーマとする小野寺健氏による連載をスタート。小野寺健氏は特定非営利活動法人日中友好市民倶楽部の理事長を務めるほか、長年にわたり数多くの中国の大学で日本に関する教育指導を行い、「淮安市5.1労働栄誉賞」や「第二回野村AWARD」、「中国日語教育特別感謝賞」などを受賞しているほか、人民日報海外版では「中日友好民間大使」として紹介されている。

第八章 AI時代の到来により劇的に変わること

AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)時代の到来は、AI導入のコストと人材のコストとの綱引きが続くことになる。優秀な人材の育成には、相当な時間が掛かるが、AIの開発は各国が総力を挙げて取り組んでおり、少数言語を除いた主要言語について言えば、想定以上の速さで、開発と改良が進むとみられている。

また、特定の言語に特化したAIは、修士課程レベルの言語能力を備えていると言われ、学習能力が高いAIの特性を活かして更に蓄積を重ねれば、博士課程レベルに到達することも、時間の問題だとみられている。

そして、これを裏付けるように、国際会議や国際シンポジウムでは、同時通訳ブースに通訳者が鎮座する光景は消え去り、スマホやアイパッドを手にした参加者が、互いの言語を気にすることなく議論を進めており、会議も支障なく運営されている。

なお、この様な傾向は、加速することはあっても、停滞と後戻りは、期待出来ないだろう。

したがって、先見の明の高い有力大学では、以前の花形とされる翻訳と同時通訳の修士課程の募集を停止する等、大学間の状況認識と格差は、更に拡がりを深めている。

そこで、門外漢とも言える筆者が、敢えて筆を取ったのは、この様な状況と問題意識を、日本語教育界のみならず外国語教育全体の問題として捉え、関係者の叡知を結集して、社会の要請に応えることが、先の見えない社会へと旅立つ学生への責務と考えたからだ。

そして、その対応策としては、人とモノが国境を越えて移動するグローバル社会とAI時代の教育は、新たな価値を創造することに、意義を見出すので、学問の垣根を超えて、学際的な分野の開拓が、光明を齎すと考えている。

また、暴論ではあるが、技術革新を嗜好の変化と置き換えれば、大量消費、大量販売の廉価なビール事業から、一定の年月と技術を要するウヰスキー事業への転換と、捉えることも出来るだろう。

なお、利潤率の劇的な増加は、社会貢献度の高まりと読み替え、市場は日本のみならず、世界へと拡大するので、日本語教育の魅力は、一層高まるだろう。

【翻訳機あれこれ】小型・高機能化が進む音声翻訳機の代表例は、ソースネクストが九月に発売した「ボケトークW」と、イヤホン型として話題を集める合同会社アスタイルの「Two Bow」。そして、前者は、言語の組み合わせによって、クラウド上の複数の翻訳エンジンの中から最適なエンジンを使用するため、翻訳精度が高いとされ、後者は、マイクロソフト社の翻訳エンジンを採用して、ディープニュートラルネットワークを活用することで、より現実的で正確な翻訳を可能にしている。 

「人民網日本語版」2019年3月20日

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