人民網ではこのほど、「AI時代の外国語教育 その苦悩と模索」をテーマとする小野寺健氏による連載をスタート。小野寺健氏は特定非営利活動法人日中友好市民倶楽部の理事長を務めるほか、長年にわたり数多くの中国の大学で日本に関する教育指導を行い、「淮安市5.1労働栄誉賞」や「第二回野村AWARD」、「中国日語教育特別感謝賞」などを受賞しているほか、人民日報海外版では「中日友好民間大使」として紹介されている。
第九章 外国語教育の生き残り策 模索その一
日本や中国の教育は、テキストを中心として体系的に学ぶことを重視するので、学生は、既存の学説や定説を、不変の真理として暗記しているが、「万物は流転する」ため、変化への対応と未知の事象に対する解決能力が、著しく低いと指摘されている。
唯一の例外といえるのがノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学本庶佑教授であり、彼は、「テキストを疑え」と、強く諭している。
また、時間は有限なので、最高の物や人に触れ、「世間の相場」を知れば、時間の浪費を避けて、人類の叡智を共有出来るだろう。
そこで勧めたいのが、ゲーテやシェークスピア、ドストエフスキー、夏目漱石、宮沢賢治、川端康成、小林秀雄といった古典や叡智との対話に精力的に取り組み、二、三流との付き合いは、極力避けることだ。
一方アメリカの教育は、法学教育に於けるcase methodを始めとして、体系的に学ぶことの弊害を熟知しているので、事例問題や演習を通じて、自ら考えて多様な事例に対する問題解決能力を高める教育を実践している。
かくて、体系的に論じることや学ぶことは、学術的には尊重されるが、学生の教育に関して言えば、象牙の塔の悪癖で、楽しく学んで、問題解決能力を高める教育の試行が、大きな課題ではないだろうか。
また、大学教育の特色は、静態的なモデルを使った学びなので、「生き馬の目を抜く」と言われる現実社会に於いては、機能しないと思われる。
そこで、筆者は、「日経ストックリーグ」と「円ダービー」の参加による動態学習を導入しており、学生が主体的に取り組みながら、社会の有機的な構造と動きを学べるため、一つのモデルとなるのではないかと考えている。
しかし、唯一の難点は、経済学博士や経営学博士の学位を持つ教員が居ても、学問が細分化された現状では、有機的かつ広範な事例に、迅速に対応する指導が行き届かない点だ。
「一人の教師が変われば、百人の学生が恩恵を蒙る」ため、研究と教学との連携について、教員各位の自覚を、強く促したい。
「人民網日本語版」2019年3月29日
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