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科学のためだけでなく一般の人のためのものでもあるノーベル賞

人民網日本語版 2019年10月11日09:54

スウェーデンの王立科学アカデミーは9日、2019年のノーベル化学賞を、米テキサス大オースティン校のジョン・グッドイナフ氏と米ニューヨーク州立大学ギンガムトン校のスタンリー・ウィッティンガム氏、名城大学の吉野彰氏ら3人に授与すると発表した。吉野氏が選ばれた理由について、王立科学アカデミーは、リチウムイオン電池が「モバイルの世界を可能にした」 と評価した。前日の8日には、ノーベル物理学賞の受賞者が発表され、米国のジェームス・ピーブルス氏、スイスのミシェル・マイヨール氏、ディディエ・ケロー氏ら、宇宙物理学を専門とする3人が受賞した。北京青年報が報じた。

10月が楽しみな月である主な理由の1つが、ノーベル賞受賞者が発表されるからだ。現在、ノーベル賞に対する注目度はますます高まっており、メディアが大々的に報道していることもあって、多くの人の間でノーベル賞が話題となっている。しかし、ノーベル賞に大きな話題性はあるものの、受賞者やその研究結果については、一般の人はほとんど知らないというのが現状だ。

今年のノーベル物理学賞の賞金の半分は、現代宇宙論における数々の理論的発見をしたピーブルス氏に授与された。しかし、ピーブルス氏の名前を聞いたのは今回が初めてで、どんな研究成果があるのかも知らないという人も多いだろう。宇宙学に興味がある人なら、ビッグバンという言葉を聞いたことがあるだろう。ジェームス・ピーブルス氏はそのビッグバン宇宙論に多くの重要な貢献を果たした。そして、1960年代に、宇宙の誕生のシナリオの根幹部分の理論を築き、宇宙マイクロ波背景放射の存在を予言した。

ノーベル賞受賞が発表され、インターネットを通じて、ピーブルス氏について調べてみても、その詳細について知るのはやはり至難の業だ。ほとんどの人の彼に対する理解は、ノーベル賞を受賞したというシンデレラストーリー止まりだろう。シンデレラストーリーは聞こえがよく、話題性に富んでいる。しかし、科学は「物語」では決してなく、「話題になっているから」というだけで注目される程度では、すぐに忘れ去られてしまう。

科学のプロフェッショナルなレベルで他の研究者のはるか上を行くというのが発展の方向で、一般の人がその背景についてはっきりと理解することはほとんどない。しかし、科学は一般の人とも密接な関係がある。ノーベル賞には、科学界内部において新たな高みを示すこと、そして、大々的に報じられることで、科学と一般の人の距離を縮めるという、少なくとも2つの面で価値がある。科学には、常に新たな後継者が必要で、それを供給するのが一般の人々だ。そして、一般の人々が科学に好奇心を抱くようになることで、科学には予備軍ができることになる。科学者は強い信念を抱いているが、科学は社会に認められなければならない。一般の人々がノーベル賞に注目していることで、奨励メカニズムや日光のように温かい雰囲気が形成されている。

ノーベル賞に対する注目は、科学に対する注目でもある。ニール・ポストマンが言及したように「愉しみながら死んでいく」というのは現実とはなっていないものの、社会は常に「愉しみながら死んでいく」という大きなプレッシャーに直面していることは決して否定できない。普段の話題では、科学は二の次にされる存在で、特に娯楽関係の話題には到底勝てない。科学が主役になれるのは、重大な科学研究成果が発表された時やテクノロジー関連の大賞が発表された時くらいのものだ。しかし、その主役の輝きを決して軽視してはならない。それに対する多くの人の理解は浅く、断片的であるかもしれないが、確かに大々的に報じられ、科学と一般の人の距離が縮まり、科学が輝きを保つことができるようになる。

科学は一番の生産力で、社会で話題の中心となるべきだ。そして、科学者の成果も大事であるものの、その成果の背後にある科学的精神を理解することがより大事なのであり、ノーベル賞の発表はその「窓口」となる。受賞者は誰でも、科学研究において、多くの苦労と困難を経験している。

1年に1度のノーベル賞の発表により、科学の魅力が大々的にPRされ、社会全体の注目を集める。ノーベル賞は、科学のためのものであり、一般の人のためのものでもある。科学のことはよく分からないという人でも、ノーベル賞に注目するべきだ。なぜなら、注目というのは態度であり、導きでもあるからだ。(編集KN)

「人民網日本語版」2019年10月11日

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