伊藤潤二の作品の最大の魅力は、恐ろしさに身の毛もよだつような物語だけでなく、そこに人間性への深い洞察がある点だ。その作品は、人の心に潜む醜い部分を赤裸々に描き出しており、人間の悪や陰湿な一面、本能に端を発した恐ろしい花を、妖艶に艶やかに咲かせている。
伊藤潤二は、シンプルな物事を通じて、大げさで恐ろしいストーリーを書き上げることに長け、それこそが彼の作品の真骨頂とも言える。そのため、その作品のほとんどは、現実の世界を描いているものの、そこで登場する現実の生活は、本当の世界とは異なる。彼が描き出す各シーンでは、思いもよらないハプニングが起きる。その作品を読む人が期待しているのは、まさにそのような予想もできないような展開で、それが、伊藤潤二の作品が多くの人の心を掴んでいる理由の一つでもある。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年6月29日