1980年代、中国では日中仕事をしている若者が教育を受けることのできる夜間の学校が人気だった。しかし、そんな夜間の学校も、時代が移り変わると共に、多くの人の記憶に残る過去のものとなっている。
上海で現在、夜間に市民向けカルチャー講座を開講する市民芸術夜間学校が若者の間で人気となっている。新しい講座の予定が発表されると受講申込が殺到し、すぐに定員に達するほどだ。受講者の90%を、80後(1980年代生まれ)と90後(1990年代生まれ)が占めている。受講者の目的は、以前の必要な知識を学ぶという硬直的需要から、自分磨きへと変わっている。
去年の26講座から今年秋季には86講座に
日が暮れると、弦楽器を背負ったり、打楽器や画材セットを持ったりした人たちが、明りの灯った上海市群衆芸術館(SMAC)にあちらこちらから集まって来る。
SMACの館長を務める市民芸術夜間学校本校の責任者・呉鵬宏氏は、「今年の春季クラスの受講者募集は記録を再び塗り替えた。当校にとって励みになるし、働いている人々の間で夜間公共文化サービスのニーズがとても高いことの表れでもある」と話す。このように応募が殺到したのは今回が初めてではない。昨年11月にも市民芸術夜間学校が秋季クラスとして開設した時も、26の講座が発表後瞬く間に定員に達した。
2016年から、中年・青年の市民の芸術教育に対するニーズが非常に高まり、SMACは開館時間を延長したほか、市民芸術夜間学校も開設した。そしてこの夜間学校の人気がどんどん高まり、スペースも時間も空きがほぼなくなると、SMAC本校に加えて静安区、徐匯区、長寧区、虹口区の文化施設に今年、分校を4校増設した。
市民芸術夜間学校増設後も、一般的な芸術と流行・トレンドを織り交ぜた講座を設置している。例えば、今年はアクリル画とアカペラの講座が新たに開設された。責任者によると、春季クラスには29講座が開講している。うちショート動画製作や相声(日本の漫才に相当)、布アートなど14の講座が新設されたものだ。
分校4校は、それぞれの特徴に合わせて講座を設置している。例えば、徐匯校は演劇(入門)、静安校はコーヒー美学とフラワーアレンジメントの講座を設置している。上海市静安区文化館の張侃胤副館長は、「当館の周辺にはオフィスビルがたくさんあるため、ホワイトカラーが好む講座を開設している」と説明する。
分校が設置されたおかげで、市民芸術夜間学校の今年春季クラスの授業時間は約50%増え、各種講座も26から46に増加。そして、受講者の定員も520人から約1200人に増えた。それでも、市民芸術夜間学校に応募が殺到する状況に変わりはなく、春季クラスの応募は5分で定員に達した。最も早いものは50秒で定員に達したという。
SMACは今月3日、各区の文化館と共同で秋季クラスの計画を発表した。市民のニーズに合わせて、秋季クラスは86講座が設置され、募集定員を2000人にまで増やした。また、設置範囲も4区から10区に増え、分校や授業を受けられる場所が15ヶ所設置された。上海市文化・旅游(観光)局の方世忠局長によると、同市は今後、市民芸術夜間学校が全16区をカバーするように取り組む計画という。
呉館長は、「市民芸術夜間学校と提携の意向を示す機構が増えている。演劇講座の講師は上海戯劇学院の教員で、料理講座の講師は5つ星ホテルのシェフ。毎週浙江省から通っている講師もいる。市民芸術夜間学校は、18-55歳の男女を対象にした公共文化サービスの公益芸術教育プロジェクトの一環で、芸術を普及させる公益性教育という形で、中年・青年を対象とした芸術市場をさらに開拓している」と説明する。
専門の講師が担当する市民芸術夜間学校の講座授業料は12コマ(1コマ1時間半)で500元(1元は約16.9円)。郊外から1-2時間かけてやって来る人も多い。また、友達と一緒に通う若者や、余暇の時間を使ってアートライフを体験しに来る中年の人もいる。
市民芸術夜間学校でこれまでにひょうたん笛と古琴を学び、今年は西アフリカの打楽器・ジャンベの講座に申し込めたというエンジニアの郭偉宏さんは、「太鼓をたたくのはとても楽しく、ストレス解消になる。僕ができる楽器はどれも市民芸術夜間学校で習った」と話す。
2016年以来、SMACは夜間学校の講座を合わせて135回開設し、受講者数は約3500人。延べ4万2000人にサービスを提供した。申込者の90%を80後と90後が占めている。
呉氏によると、市民芸術夜間学校の講座開設は、市民を対象とした綿密な聞き取り調査の結果を基にしている。修了後は、満足度を調査するアンケートも行われ、出席率や満足度などを基にして内容や講師などを調整しているという。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年8月4日