食事の時間になると、まず、テーブルの上にタブレットPCやスマホをセッティングし、それから食べ始めるというのが今、多くの若者の習慣となっている。そして、食事の定番の「おかず」のような存在になっている動画やオーディオが今、中国では「電子ザーサイ」と呼ばれている。北京青年報が報じた。
動画がなくてはならない「おかず」に
鄧さんはスマホのヘビーユーザーで、「電子ザーサイ」を欠かさず食卓に並べている。一人で食堂に行って食事をする時などは、鄧さんは隅の方の席に座り、イヤホンをして15分から20分ほどの動画を「おかず」にしている。「バラエティ番組やスポーツの試合、ゲーム配信など、エンターテインメントに偏ったコンテンツが、私の『おかず』」という。
ゲーム実況者の老七さんは、「スマホが普及し、人々の生活はさらに断片化している。食事、トイレ、地下鉄、人々はどこでもスマホをいじったり、動画を見たりしている。食事をしながらスマホをいじるというのは、もっと以前から私たちの生活に溶け込んでいた行為だ。ただ最近になってネットユーザーが、『電子ザーサイ』という言葉を作り出した」との見方を示す。
音楽や動画を配信するブロガーの多くが今、自分の作品に「電子ザーサイ」や「おかずになるVlog」といったタグを付けている。食事の時間帯を選んで、ライブ配信をしているパーソナリティもいる。
プロのゲーム実況者である芸沢さんはある日、フォロワーから、「昼や夜の食事の時間帯の配信をやめないでほしい。視聴するピークの時間帯だから」と言われて、配信時間を変えたという。そして、午前11時ごろに朝ごはんを食べ、11時半から配信を始め、フォロワーに「電子ザーサイ」を提供する日々を送るようになったという。そんな芸沢さんは、自分が食事をする時も、スマホをいじったり、動画を見たりして、パーソナリティから視聴者に変わり、気分転換をしている。
「電子ザーサイ」はポジティブな自分へのツッコミ
80後(1980年代生まれ)の青年学者・王程韡氏は中国科学技術大学科技史・科技考古学部の特任教授であると同時に、飲食社会学者でもある。そんな王氏は、「『電子ザーサイ』は、一種の生活現象で、若者が都市での生活から一時的に逃避するための行為と見なすことができる。多くの人は、食事の時だけでなく、トイレに行った時もスマホをいじったり動画を見たりして、『逃避』している」との見方を示す。
そして、「多くの人は『電子ザーサイ』をおかずにして、『充電』している。『電子ザーサイ』をおいしく『食べている』人は、その過程で気分転換を済ませ、気分を新たにしてまた社会に戻って活動しているのだから、最もプラスのエネルギーに満ちた人だと、私は思う」とする。
さらに、「『電子ザーサイ』をおかずにする人は、単に『孤独な人』というわけでは決してなく、技術が私たちの生活を侵略していると考えてもならない。『電子ザーサイ』という言葉自体、自分への強烈なツッコミで、ポジティブな表現でもある」との見方を示した。 (編集KN)
「人民網日本語版」2022年11月25日