米ニュースメディアの影響力低下 最新調査
米独立系調査機関ピュー・リサーチ・センターはこのほど、ニュースメディアに対する一般市民の態度などを調査するアンケートを実施。回答者の31%が、「ニュースメディアに興味がない」と答え、その理由として、「必要な情報を提供していない」「詳細を報道していない」ことを挙げるなど、米国のニュースメディアの影響力が低下していることが明らかになった。人民日報が報じた。
同調査報告は、「情報の発信源が日に日に多元化するにつれ、多くの記者が、従来のようにニュースを選別したり、制作したりする代わりに、ソーシャルネットワークやデジタル科学技術に頼っており、ニュースを伝えたり、事件を調査したりする役割というより、情報を横流しているにすぎない」と指摘。「真実性に欠けている」としている。例えば、最近、米大手通信社「AP通信」を含む、多くのニュース機構が発信したソフトウェア会社「グーグル」に関するニュースは、信頼性に欠くPR会社から発信されたことが後に判明した。
同センターは、「米国メディアが発信するニュースの質が低下しているのは、デジタルメディアの台頭の影響。従来のニュースメディアにはリストラの波が襲っている」と分析している。
社員のリストラに踏み切っている米国の大手ニュース機構には、週刊誌「ニューズウィーク」や「ニューヨークタイムズ」、ケーブルテレビ向けのニュース専門放送局「CNN」、ニュース情報誌「タイム」など、歴史ある機構も含まれている。同センターが発表しているデータによると、全米で新聞の編集に携わっていた人の数は2012年、最も多かった2000年と比べて30%も減少した。また、新聞業の正規雇用者の人数も1978年以来では初めてとなる、4万人以下にまで減少した。
深みのある報道で知られるCNNが発信するニュースの文字数は過去5年間で半分に縮小された。また、毎年3月に世界長者番付を発表していることで知られている「フォーブス」のようなメディアも、パソコンとインターネットさえあればニュースを収集できるようになり、記者が取材に出かける必要は全くなくなった。このように大手メディアでさえ経営が危ぶまれていることを背景に、歴史の浅いメディア会社の中には倒産に追い込まれているところもある。
あるアナリストは「デジタル革命が世界中のメディアを1つのプラットホームにまとめたため、従来のメディアは熾烈な競争を強いられている。時代の必要に応えるため、相応の変革をして転換を進めなければ、伝統的なメディアは生き残り、発展を遂げることはできない」と指摘する。
米コロンビア大学のトッドギトリン教授(メディア・社会学)は取材に対して、「米国のニュースメディアの報道は確かに質が低下している」と指摘。その理由について、「メディア、特に伝統的なメディア広告収入の分野での損失を埋め合わせるために、情報を収集したり、ニュースを探したりするスタッフをリストラしている」とした。
一方、同大学ジャーナリズム学部の謝斯睿教授は、「米国のメディアのニュースの質に問題があるのではなく、ニュースの分野の人々の消費習慣に変化が起きているのだ。伝統的なメディアである新聞やテレビなどの需要は今まさに分岐点を迎えている」と指摘。「部分的に見れば、リストラは確かにニュース業界にショックを与えているが、全体的に見ると、現在の情報量やニュースの量は、いつの時代によりも多い。ニュースメディアの一部の分野の報道も以前より向上している」との見方を示した。(編集KN)
「人民網日本語版」2013年4月2日