日本の漢方薬事業 売上好調だが開発は中国に及ばず (2)
こうした中日間の「協力」によって、中国の「六神丸」がツムラの「救心」に生まれ変わるのにはびっくりする。救心は年間1億ドルを売り上げるドル箱商品だ。
▽「育薬」で西側の認知を獲得
漢方薬の輸出をめぐる難問は、西側の価値体系では漢方薬をよく理解できないことにある。漢方薬の理論には玄妙でとらえどころのない概念が含まれ、これを英語に適切に訳すことは難しい。そこで、日本の漢方薬輸出戦略では「育薬戦略」(漢方薬が効果を発揮する疾患に的を絞って、臨床データの蓄積を行う取り組み)が非常に重要なポイントになる。
ツムラが開発した「六君子湯」を例に取ると、もともと虚弱体質の患者向けに開発されたこの漢方薬には、食欲を促進し、体質を改善する効果がある。欧米への普及をはかるため、ツムラは北海道大学との共同研究を進め、六君子湯を服用すると、体内で食欲を増進するホルモンが分泌されるとの結論を導き出した。そこで西側の医学界は、六君子湯を外科でのガン治療に際して食欲を増進する補助的な薬品として受け入れるようになった。
▽日本の漢方薬開発は中国に及ばない
日本のTS・チャイナ・リサーチの田代尚機代表取締役は、日本の投資界で有名な「中国通」だ。1984年から2003年までの20年間、日本最大の経済研究機関の大和総研グループで働き、94年から03年にかけては代表として北京に駐在し、中国経済について深く研究した。
田代代表取締役は記者の質問に次のように答えた。