再度チャンスを迎えるドーハ・ラウンド
世界経済の回復が阻まれ、世界貿易が縮小する中、長年膠着状態にあるドーハ・ラウンドが様々な場で言及されている。これについて世界貿易機関(WTO)のハラ事務局次長は、長年放置されてきたドーハ・ラウンドが年末に進展する見込みがあると指摘した。国際商業会議所(ICC)の馮国経名誉会長は「ドーハラウンドが起死回生すれば、世界に1兆ドルの収益をもたらし、2100万人の雇用を創出する」と指摘した。
ドーハ・ラウンドは2001年に始まった。元々3年で合意する計画だったが、しばしば阻まれ、10数年経ってもわずかな進展しかない。表面上は先進国と途上国が農業補助金、農産物関税、工業製品関税の削減幅などについて合意できないことが交渉放置の大きな原因だ。だが実際には他の制約要因もある。
まず、ドーハ・ラウンドの始動は、米同時多発テロ後しばらくの国際政治の雰囲気に促された部分がある程度ある。だが参加国の真の意図を十分に反映することができずにいるうえ、多くの議題において反対意見を故意に回避または軽視して、議題の範囲を広げすぎている。実際には「開発」の議題は米国など主要先進国が主たる関心を寄せる問題では決してないのに、途上国は「開発」を過度に強調しているため、先進国は交渉への熱意と利益上のインセンティブを欠いている。また、交渉の壮大な目標と高すぎる期待によって、交渉プロセスは当初より困難と曲折が運命づけられている。
次に、WTO加盟国の増加によって、加盟国間の利益のバランスを取ることが一層困難になっている。当初の交渉参加国は155カ国にも上った。多くの交渉グループが存在し、関係は複雑に入り組み、利益のバランスを取るのは困難だ。途上国は経済的台頭に伴い交渉カードが増え、ドーハ・ラウンドは「開発」ラウンドと定義されるようになった。交渉における地位も高まり、過去の多くの「ただ乗り国」は「実務的な交渉国」へと変わった。だが現在の対外開放の水準にかんがみ、途上国はより深いレベルで貿易障壁を撤廃し、貿易慣行も改革しなければならず、これもドーハ・ラウンドの妥結を一段と難しくしている。