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日本の「価値観外交」は東南アジアでは通用しない

 日本の安倍晋三首相は今年1月にASEAN3カ国を訪問した際、「東南アジア外交5原則」を発表した。これは今後一定期間の日本の東南アジア外交政策の柱と見られる。5原則で最も際だっているのがいわゆる「価値観外交」、すなわち自由、民主、基本的人権といった普遍的価値観を日本とASEANが共同で打ち固め、拡大するというものだ。

 記者の取材した東南アジア各国の学者は、いわゆる「価値観外交」は1970年代以降日本政府の遂行してきた「福田ドクトリン」に背くだけでなく、排他性が明確であるため、東南アジア諸国では通用しがたいとの認識を示した。

 安倍氏が東南アジア諸国で推し進めようとする「価値観外交」の念頭にあるのは明らかに中国であり、日本メディアはこの点を隠し立てしていない。産経新聞と読売新聞は今年初めの論説で、強大化する中国に共同で対処するため、東南アジア諸国との協力を強化すべきとの考えを示した。

 日本外交を専門とするタイ・チュラロンコーン大学アジア研究所の研究員は「米国と日本は東南アジアで自らの利益に沿う政治と経済のルールを制定することを望んでいる。『価値観外交』は政治ルールの一部だ。だが東南アジアの人々は外部勢力の介入に慎重な姿勢だ」と指摘した。

 シンガポール国際問題研究所の戴尚志所長は4月9日、タイの英字紙ネイションへの寄稿で「日本が東南アジアへの関心を大幅に強めた背景には中国要因の後押しがある」と指摘。「東南アジアの政府や経済界に強い関心を示すことは、日本が東南アジアで新たなパートナーシップを築く助けとなりうるが、中国に焦点を当ててはならない」と戒めた。

 シンガポール国立大学東アジア研究所の趙洪シニアフェローは「東南アジアの大多数の国々は日本に付き従って騒ぐことを望んでおらず、いくつかのASEANの加盟国は中国との良好な関係を望んでいる。東南アジア諸国は東南アジアで日本の影響力が低下する一方で、中国は一挙手一投足が全局面に影響を及ぼす地位にあることをすでに意識している」と指摘した。

 安倍氏の「価値観外交」に対する印象は東南アジアの学界でも良くなく、「価値観外交」は政治的道具だと考える学者が少なくない。「東南アジアは日本からの投資も中国からの投資も必要としている。経済分野での中日の競争は東南アジア諸国に利益をもたらすかもしれない。だが東南アジア諸国は政治分野での中日の競争に巻き込まれることは望んでいない。これは東南アジア諸国の利益に合致しない。したがって価値観外交は東南アジアでは歓迎されない」と前出のチュラロンコーン大学の研究員は指摘。「東南アジアで中国は日本より多くの『文化資本』を持つ。タイを例に取ると、多くのタイ人は中国人を祖先に持ち、中国に対して一体感を抱きやすい。一方、日本との関係は商業分野に限定されやすく、深まっていくことがない」と述べた。

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