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河南省の農場で循環型農業に取り組む川崎広人さん

人民網日本語版 2018年12月28日10:23

小劉固農場のビニールハウスでトマトの世話をする川崎広人さん(撮影・張浩然)。

「僕のお墓を用意してほしい。僕はここに骨を埋めるつもりだから」と、これは中国へ戻った川崎広人さん(72)が、李衛さんに会った時に最初に言った言葉だ。新華社が報じた。

河南省新郷市原陽県小劉固農場のオーナーである李さんは、川崎さんのこの決意を聞いて感動したという。

農業や漁業が盛んな日本の岩手県から来た川崎さんは、微博(ウェイボー)のアカウントを開設しており、そのフォロワーは27万人もいるが、4年前はその数が300人にも満たなかった。微博を通して、多くの中国人が川崎さんの名前を知り、そして徐々に川崎さんが行う「堆肥」を使った「循環型農業」に対する理解も深まってきた。

川崎さんは大学で農業経済学を学んだあと、インドネシアに留学して修士号を取得。そして、農業研究所の仕事を辞めた後、長年にわたってある農業協同組合に勤めた。定年退職後の2009年には、中国の青島農業大学に招かれ1年間勤務した。

青島で勤務したその1年間で、川崎さんは中国の多くの農村で家畜の糞便が未処理のまま田畑にまかれ、ときには用水路に捨てられて環境汚染の原因になっているのを目撃した。その他、化学肥料や農薬が大量に使われていることが原因で、土壌が固くなり、農作物の品質や生産量にも影響を及ぼしていることにも気がついた。

自分の最後の力を捧げる場所を見つけたと感じた川崎さんは、中国で循環型農業を広める決意を固めた。「ノーマン・ベチューンが中国の医療に貢献したように、僕も中国の農業に貢献したい」と話す川崎さんは、「妻に中国で仕事をしたいと話すと、妻は僕が彼女のことが嫌いになったと勘違いしていた」と笑顔で振り返る。

川崎さんは67歳だった13年、30キロ以上の荷物を背負って中国で、「循環型農業」をめぐる夢を実現できる場所を探し始めた。しかし、甘粛省から一路東へ向かったものの、奔走するばかりでなかなか自分と同じことを目指す「知己」を見つけることができなかった。そんな中、知人の紹介でたどり着いたのが李さんの農場だった。

以前は新聞記者だった李さんは、父親・李敬齋さんの養豚場を引き継いだ後、多額の資金を投じて有機農場への転換を試みたものの、市場を開拓できなかった。

「私と川崎さんはどちらも循環型農業をしたいと思っていた。でも、私は以前は循環させることしか知らず、付加価値を高める加工をすることを思いつかなかった。川崎さんは小麦を粉にして麺を作り、売ってみるように勧め、これが私に着想を与えることになった。川崎さんに言われた通りに肥料をやると、農場の小麦がすくすく育ち、とてもうれしかった」と李さん。

川崎さんは、夢を叶えるためにそこに留まるよう誘ってくれた李さんの所に喜んで腰を落ち着けたものの、堆肥はコストが高い上に、使うのにも手間がかかり、循環型農業の普及は思い描いていたほど順調に進まなかった。また、暮らしていく上でも文化の違いなどから様々な問題にも直面した。

まず、言葉の問題だ。中国語の勉強を始めた時、川崎さんは既に63歳だった。小劉固村の村民・李海涛さんは、「川崎さんが来たばかりの時は冬で、『銭湯に連れて行ってほしい』と中国語で書いた紙を私に見せた。だから、街まで一緒に行った。彼はお風呂が大好きだ」と笑顔で振り返る。

2015年冬、農場のハウス35棟が猛吹雪で倒壊してしまった。損失は甚大だったものの、川崎さんが微博で支援を求めると、多くの注文が集まり、数日のうちに約7万元(1元は約16.09円)分の農産品が売れた。そして、農薬や化学肥料を使っていない農産物が好評を博した。一度は破産の危機に陥った農場は、川崎さんのおかげで徐々に好転の兆しをみせるようになった

川崎さんは、循環型農業の普及が一朝一夕で実現できることではないことを承知している。農場は中国全土に向けた研修の取り組みをスタートさせたほか、日本の農業企業とも協力して、若手就農者の育成に取り組んでいる。

今年河南師範大学を卒業した劉炎さんは、「来年、日本の農業企業で2年間勉強する予定」と話す。

チベット族の男性・旦正加さん(18)と拉毛加さん(19)も、堆肥工場や野菜を育てるビニールハウスで、川崎さんにノウハウを学んでいる。現在、川崎さんは早朝にビニールハウスに入り、トマトの剪定をしたり、ヒモを整えたりしており、その横では、研修に来た若者たちがその手伝いをしている。

冬本番の今、農場は冷たい風が吹いて底冷えがするものの、ビニールハウスの中は春のような温かさだ。日本の大玉トマト「麗夏」の種約1500粒が育苗箱に植えられ、発芽の日を待っている。(編集KN)

「人民網日本語版」2018年12月28日

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