日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2月1日の午前0時に発効した。これにより、世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める人口6億4000万人をカバーする巨大な自由貿易圏が誕生した。経済参考報が伝えた。
協定に基づき、日本とEUは即時、または段階的に大半の関税を撤廃することになっている。EU側は日本に対する99%の関税を撤廃し、日本はEUに対する94%の関税を撤廃する。また、非関税障壁が撤廃・削減される。一方で、双方は、サービスや知的財産権の分野で連携を強化し、開放度を拡大させるほか、地域の食品ブランドを保護する「地理的表示(GI)」やオンラインデータ流通の監督管理水準の相互十分性を認定し、双方間の貿易を一層円滑化させ、開放の度合いを強める。
日本の消費者にとっての目に見え実感できるメリットには、欧州産のワインやチーズなどの乳製品が明らかに安くなる点だ。小売業大手・イオンは2月1日より、全国の3000店舗で欧州産ワインを一斉値下げした。
EU側も段階的に日本製の自動車に対する関税を引き下げ、現在の10%から8年後には完全に撤廃されることになっている。自動車生産大国である日本は、EPAが発効したことで、欧州への自動車の輸出が増加すると期待している。
EPAは日本の産業界にとっては、メリットもあればデメリットもある。例えば、日本農林水産省は、農林水産物の生産額が最大1100億円減少する可能性があると試算している。また、北海道のチーズも世界で人気を誇る欧州のチーズと、熾烈な競争を展開しなければならなくなる。ホクレン農業協同組合連合会は今月、東京・表参道ヒルズで「北海道地チーズ博」を開催し、国産チーズの魅力を大々的にPRし、国内での売上高拡大を図った。その他、欧州側が関税を撤廃・削減することで、日本の農産品の輸出が増加するかは今のところ分からない。山梨県のワインや佐賀県のお茶の生産業者は欧州市場進出の意欲を見せているものの、日本のブランドが現地で受け入れられるかは未知数だ。
日本とEU間のEPAは、昨年12月に発効した環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)に続く大きな経済協力協定だ。日本政府は、二つの協定の発効によって、日本の実質GDPを約2.5%(約13兆円分)押し上げ、新たに約75万人分の雇用が生まれると試算している。さらに、東南アジア諸国連合加盟10ヶ国に、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国を含めた計16ヶ国でFTAを進める構想・東アジア地域包括的経済連携全面EPA(RCEP)の交渉が進められており、年内の実質妥結を目指している。
業界関係者は、「日本が最近EPA締結の面で挙げている成果は、自由貿易を支持し、保護貿易に反対する意図を反映している。多くのEPAを締結することで、貿易の分野の『協力の輪』を拡大し、世界市場の勢力図において有利な立場を築こうとしている」と分析している。
現在、日本とEUはそれぞれ個別に米国と貿易協定の交渉を進めており、日本とEU間のEPAとCPTPPの妥結により、間違いなく米国に一定の圧力をかけることができる。
富士通総研経済研究所の主席研究員・金堅敏氏は、「EUはこの協定が、米国が大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定の交渉のテーブルに戻るきっかけになるほか、英国とのEU離脱をめぐる交渉材料となり、EUがアジア市場を開拓し、欧州とアジアの市場一体化を推進するためのルールサンプルとなることを期待している。一方、日本は、EUとのEPAが、貿易交渉において、米国から来るプレッシャーを軽減するほか、アジア太平洋貿易協定(APTA)交渉における優位性を拡大し、高水準の貿易ルールを制定する際の主導権を握ることを願っている」と分析している。
また、「日本とEU間のEPAは短期的には中国に対する影響は限られている。しかし、中期、長期となると、モノのインターネット、ビッグデータ、人工知能(AI)、ブロックチェーンなどのデジタル化技術を背景にした世界市場の一体化が、今後のグローバル化の時代的特徴となる見込みで、中国は伝統的な分野の優位性だけにこだわることはできず、デジタル時代のグローバルのルール制定、発展に適応し、それを牽引するようにならなければ、守勢に回ってしまうことになる。自由貿易体系を保護し、世界の高水準の自由貿易区建設を推進するという観点から見れば、中日双方には協力の大きな余地がある」との見方を示す。(編集KN)
「人民網日本語版」2019年2月14日
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