日本政府がこのほど発表した最新の経済情勢報告によると、日本経済は引き続き「緩やかに回復して」おり、2012年12月に始まった景気回復は「戦後最長となった可能性がある」という。しかし一方で、日本国民に景気回復の実感はなく、サイフを引き締めなければならないと考える家庭が増え、その原因を追究する必要がある。
日本政府の報告によれば、このたびの景気回復は今年1月で74ヶ月に達するとしている。日本の茂木敏充・経済再生担当大臣は閣議後の記者会見で、「このたびの景気回復の主な原動力は雇用環境の改善、企業の収益増加が過去最高の水準に達したことにある」と発言。通常なら、政府はいくつかの経済指標を発表するだけで、景況判断は内閣府が大学教授や経済専門家で構成される研究会に委託し、企業の生産状況、自動車や家電などの販売状況、企業の経営業績の9つの指標に基づいて総合的に判断し、長期的な研究論証が必要とされてきた。結果の発表が1年以上ずれ込むこともあった。今回のように日本政府高官が検討の結果を研究会よりも先に発表するのは、宣伝拡大の政治的意図があると考えられている。
日本はこれまで3回の長期景気回復を経験してきた。1回目は1965年11月から70年7月までの57ヶ月間、2回目は86年12月〜91年2月の51ヶ月間で、典型的なバブル経済膨張期にあたり、3回目が02年2月〜08年2月の73ヶ月間で、IT(情報技術)経済の発展期だった。それに対して、現在の景気回復周期は過去3回とは明らかに違いがある。60年代は日本の高度成長期で、GDPの平均成長率は11.5%に上り、80年代中後期の日本は中高速成長期に入り、このときのGDP平均成長率は5.3%だった。21世紀初頭のIT成長期のGDP(国内総生産)平均成長率は1.6%、現在の景気回復における昨年9月までの平均成長率はわずか1.2%で、日本国民の多くはこのたびの景気回復を「実感のともなわない経済回復」と呼んでいる。
日本政府が発表したこの報告によると、今回の景気回復は12年12月に安倍晋三氏が2回目に首相に就任して以来続いている。アベノミクスの「3本の矢」政策、すなわち量的緩和の金融政策、積極的な財政政策、構造改革をよりどころとして、日本の市場環境には大きな変化が起こった。日本銀行(中央銀行)は通貨を大量発行して円安をもたらし、これが輸出の増加をある程度は促進し、マイナス金利政策は資金を市場に集めた。同時に、日銀は株式やファンドを大量に購入して、市場価格を引き上げた。積極的な財政政策がインフラ投資を拡大し、構造改革が高齢者と女性の就労を促進した。同時に、企業の競争力向上をねらった法人税減税、設備投資の減税などで、企業の負担が大いに軽減された。資本金10億円以上の大企業の経常利益は12年の26兆9千億円から17年度は57兆6千億円に増加したが、大企業の多くは投資や配当を増やしてはおらず、大量の利益を内部留保し、18年3月の時点で大企業の利益の内部留保は425兆8千億円に達する。
同報告によれば、日本の経済情勢は非常に好調だが、日本国民にそうした実感がないのはなぜなのだろうか。家庭内の収支の変化がその理由を説明してくれる。夫婦2人の世帯の場合、07年の平均月収は52万9千円だったのが、17年は53万4千円に増え、5千円増加した。だが可処分所得をみると、07年は44万2千円だったが、10年以降は43万4千円に減った。これは主に個人が支払う税金、年金、介護保険など社会保険料が1万3千円増えたためだ。差し引きすると、実際の可処分所得は8千円減少したことになる。現在、家庭の主婦がSNSで最も欲しがる情報は食費をいかに安く抑えるかとカードのポイントなどの節約術だ。
日本のメディアと経済界は政府発表の経済データに対し、見通しへの不安を示すことが多い。一方で、米国の保護貿易主義が引き起こした世界経済の成長の鈍化、日本の工業製品、機械加工設備、電子部品の輸出への影響があり、また一方で、日本政府が今年10月に予定する消費税率の8%から10%への引き上げが、日本国内の消費心理に軽視できない打撃を与えるだろうということがある。明治安田生命保険の小玉祐一研究員は、「日本の経済成長は海外市場への依存度が高いため、国際経済情勢が変化すると日本経済の先行きに重大な影響を与える」と指摘する。
政府の報告のデータと人々の実感との開きをどのように縮めるかは、日本政府の重要な任務の1つになるとみられる。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年2月13日
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