1990年代に現在の北京北三環路聯想橋の一帯を通り過ぎるたび、三環内に畑があるとは、と不思議に思うことがしばしばだった。後にそこが中国農業科学院の試験田であることを知った。
この試験田にはいつの間にか、鉄筋構造の大きな建物が作られた。オフィスビルのようには見えず、マンションにも見えない。そこが普通の試験田よりもハイレベルなLED植物工場であることを後から知った。
「ここの野菜はすべてそのまま食べられる」。中に入ると、北京中環易達設施園芸科技有限公司の劉従文副社長が筆者にそう話した。
筆者は先ごろ中国内初のスマート型LED植物工場を取材した。300平方メートル余りのホール内のガラス部屋の中は、2列・5層の栽培棚を持つ植物苗育成工場だった。青と紫の人工光源を受け、整然と並べられた苗がすくすくと成長していた。劉氏によると、その単位面積あたり苗栽培効率は通常の40倍以上で、成長にかかる時間は40%以上も短縮できるという。ガラス部屋の外は、5層栽培床の立体栽培を採用する野菜工場で、細かく丸い粒状の「土壌」にはレタスが植えられていた。どれもほとんど同じ形をしており、「工場化生産」の素晴らしさを実感した。劉氏によると、これは湛液型水耕(DFT)という栽培方法で、これによって栽培されるレタスは定植から収穫までの日数がわずか20日前後だ。一般的な畑の栽培期間より40%短く、単位面積あたり生産量は25倍以上だ。商品は清潔で汚染されておらず、商品の価値が高い。
アグリリンクと呼ばれる「施設農業IoT制御システム」のディスプレイ前で、劉氏はLED植物工場のスマート化管理を説明してくれた。環境制御システムはセンサー、コントローラー、執行機関の3つからなる。ここには数十のセンサーがあり、温度、湿度、照度、CO2濃度、pH値、EC値、DO値などの作物の上部環境要素及び根の環境要素が含まれる。センサーと人工知能(AI)を搭載したビデオカメラの視覚分析システムにより、温度・照度・水分・ガス・肥料などのパラメータを絶えず最適化している。植物成長の表面的なパラメータの変化を集め計算学習を行い、作物の成長に最適化されたデータモデルを導き出し、「植物との対話」を行う。「最少の資源で生産量を最大にし、品質を最高にすることが最終の目的だ」。
中国の植物工場技術の基礎を固めた、中国農業科学院農業環境・持続可能な発展研究所「施設植物環境プロジェクトチーム」首席の楊其長研究員は「LED植物工場は世界が認める施設農業発展の最高レベルの段階だ」と述べた。
最高レベルというのは、これまで数千年にわたり、「天気次第」で自然循環に依存していた農業が、天気(太陽)ではなく人工光源を使用するようになったからだ。また土壌ではなく栄養液を使用し、制御可能な環境における効率的な生産を実現した。「これは真の破壊的技術だ」。
高効率生産といわれるが、どれほど効率的なのだろうか。楊氏によると、その単位面積あたり生産量は自然栽培の数十倍、さらには百倍にもなるが、水使用量は5%未満に過ぎない。植物工場は、施設内の高精度環境制御により農作物の一年中の連続生産を実現する高効率農業システムで、コンピュータにより植物の成長過程における温度・湿度・光・CO2濃度・栄養液などを自動制御できる。自然条件の制約を受けないまたはほとんど受けないため、砂漠・荒れ地・島・水面などの耕作が不可能な場所、及び都市部の高層ビルや一般的な住居、さらには宇宙環境でも農作物の生産ができ、人類の食の需要を絶えず満たすことができる。
2009年8月31日は、中国の植物工場発展の歴史的な一日だ。チームが北京中環易達と開発した中国内初のスマート型植物工場が長春農業博覧会に登場し、170万人以上の観客の興味を引いた。これは中国がスマート化植物工場技術を確立した世界少数の国になったことを示している。また中国の植物工場技術は、これより世界に進出した。光調合に基づく植物LED光源製品はすでに米国、日本、欧州などで販売されている。植物工場の製品はシンガポールなどに輸出されている。楊氏は「植物工場も今後、中国の名刺になれる」と自信を持って語った。(編集YF)
「人民網日本語版」2019年7月5日