ますます多くの若者が一人暮らしを選ぶのはなぜだろうか。
自由を愛する、独立した空間がほしいなどは、一人暮らしを選ぶ積極的な理由で、主体的な一人暮らしと言えるだろう。一方、受け身の一人暮らしをする人の圧倒的多数は「社交恐怖」が原因だと言える。
王さんもそうした傾向があるという。友達を誘って集まりたいとしているが、その日が迫ると、後ろ向きな気持ちになる。「一番最初に感じるのは面倒ということ、そんなにたくさんの人に会いたいと思わないし、何かあれば微信(We Chat)でやりとりすればいい。集まりに参加しても、自分はとても静かにしている。知らない人のいる集まりには抵抗を感じて、うちにいた方がいい」と言う。
以前の統計では、一人暮らしの若者の「オフラインでは一人、オンラインではみんなとわいわいやるのが常態」という様子が明らかになった。SNSアプリが高度化・バージョンアップすると、それによってもたらされたのは一部の人の「社交レベルの低下」だ。微信で話せることであれば電話をかけない。文字を打てるなら音声を発信しない。集まりではいつも黙々と食べ続ける……
北京大学の靳戈研究員の分析では、「社交不安がある人は、人とつながりたいとは思うが、結局つながるのが怖くて、一人でいることを選択する。人とつながるのが怖くて後ろ向きになるので、一人でいる状態を長く続けることになり、状況を改善するために努力しようと思わなくなり、さらに後退する可能性がある」と分析した。
インターネット、特にモバイルインターネットが誕生・発展すると、働き方が変わった。仕事の時間と空間が無限に広がり、客観的に見て若者は自分だけの空間を確保したいとより強く願うようになった。前出の張氏は、「一人暮らしの若者にとって、退社とは仕事の終わりを意味しない。ハイテクとSNSの更新・バージョンアップで、生活と仕事との切れ目のない状態がさらに激化した」と説明した。
社会環境の変化が若者の一人暮らしの選択にも影響を与えている。
これまで、中国人は家族で集まって生活するのを好み、「大家族」をよしとする伝統的な観念が根強かった。しかし社会の発展に伴って、「大家族」の観念はその土台が徐々に失われた。靳氏は、「計画出産政策により中国の家族構成は『3人家族』が現れ、都市化のプロセスで建設された各戸が独立したスタイルのマンションが、『大家族』がそのよりどころとしてきた空間的基礎を消滅させた。また現代の若者は『共働き家庭』で育ち、家庭での活動時間はかつてより少ない。空間と時間と2つの要因により、『大家族』の生活シーンはますます過去のものになり、一人暮らしが若者の期待するライフスタイルになった」と分析した。
生活の圧力と仕事の圧力が増大し、若者はますます一人暮らしを選択するようになった。取材でわかったのは、回答者が申し合わせたように、仕事と生活のプレッシャーが増大したので、低欲望の特徴がみられるようになった、と答えたことだ。日本の経営コンサルタントの大前研一氏は著書「低欲望社会『大志なき時代』の新・国富論」の中で次のような情景を描いた。社会の競争圧力がますます大きくなると、ますます多くの若者がこのために向上したい、人とつながりたい、恋愛して結婚したいという欲望を失い、自分の小さな部屋に閉じこもって気ままな生活を送りたいと願うようになる」。
靳氏は、「大都市では結婚・出産にコストがかかり、『原子化』(砕片化)された仕事の形態、今や普通になってしまった『966』(毎日朝9時から夕方6時まで週6日間働く)の勤務体系が、若者から人とつながる時間を奪い、若者たちはますます異性と知り合い、異性を理解する機会が減り、晩婚や高齢出産がごく当たり前になり、客観的な現象として若者の一人暮らしが目立つようになった。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年6月2日