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アン・リー監督 中国人としてのアイデンティティ

 中国・台湾で生まれたアン・リー監督は役者になる夢を追いかけ米国に渡る。アン・リー監督が中国人であるにもかかわらず、非常に西欧的な映画を撮ることや、「グリーン・デスティ二ー」の公開時に中国で巻き起こった西欧に媚びた映画という批判も、すべてが米国の大学で正式に映画を勉強したというキャリアによるところが大きい。しかし、アン・リー監督の根にあるのはやはり中国人的な思考や教養であり、故郷台湾に対する思いも強い。アン・リー監督は、東洋と西洋の両方をうまく自分の中に取り込み、あるいは切り替えながら創作活動を行っている。

 新作「ライフ・オブ・パイ」は、どう猛なベンガルトラと一緒に救命ボートで227日間大海原を漂流することになった16歳の少年パイのサバイバルを描いている。この新作の取材で、映画の中に道教や儒教の教えが色濃く出ているという質問に対し、アン・リー監督は「非常に伝統的な中国文化の環境の下で育ったので、儒教や道教などの影響からは逃れられない。儒教や道教は生活の隅々にまで行き渡っており、私の教養の中にも自然と含まれている。生活していく中の、至る所にその現象は現れ、筋道が通らない時には、必ず精神の拠り所となる。そういう意味で、道教の影響は映画の中に確かに存在する」

 「一方、私の母親はキリスト教徒だったので、幼い頃、いつも私を連れて教会に通っていた。神を信じることや、イエス・キリストという存在は私の成長過程の中で、非常に深く根差しているものだ。しかし14歳になって、自分自身で思索を始めたとき、教会にも寺にも行かなくなった。だが、神を敬う気持ちがなくなったわけではない。はっきり言ってしまえば、どこか中国式ともいえる。儒教や道教は変動性や柔軟性に富んでおり、その概念は固定されているわけではない」と語っている。

 「ライフ・オブ・パイ」は台湾でも一部撮影を行った。映画の中に登場する、非常にミステリアスな人食島の外観は、実は台湾北部に位置する観音山が使われている。今回、台湾で撮影を行ったことについてアン・リー監督は「台湾で撮影すると言ったら製作会社から頭がおかしくなったのではないかと反対された。しかし、自分の中ではやろうと思えば必ずやり遂げられるという自信があった。実は、パイの家族が乗った船は、台湾からそんなに離れていない太平洋沖で沈没した。北に向かって一直線に辿ればメキシコに到着する。そういう意味でも船が沈没した一番近い大陸である台湾での撮影は、非常に筋が通っており、まさに運命のように感じた」と語り、それ以外の理由として「台湾の映画製作者に映画の最先端を行くハリウッドの撮影現場を実際に体験してもらい、何かを台湾に残したかった。また、ハリウッドから遠く離れた場所で、最新式の撮影で映画を撮ることによって、創作の自由を得ることができ、自分自身の創意や創作空間も大幅に広がった」と語っている。(編集MZ)

 「人民網日本語版」2013年2月18日 

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