日本が平和の約束に背くことは許されない
日本の安倍晋三首相は1月30日の衆院本会議で、憲法改正の手続きと条件を定めた憲法第96条の改正を検討すると明確に表明した。国会および日本国内では第96条改正への抵抗は比較的小さい。まず憲法改正の条件を緩和することで、交戦権を放棄し、軍隊を保有しないと定めた憲法第9条の今後の改正に向けた基礎固めをする狙いが自民党にはある。安倍首相は憲法改正によって国防軍を創設する考えを表明している。(文:五十嵐仁・法政大学大原社会問題研究所教授)
「平和憲法」は日本が戦後国際社会と交した約束であり、日本の国際社会復帰の基礎でもある。日本は第2次大戦中の犯罪行為によって、アジアの隣国に甚大な損害をもたらした。戦後日本は「平和憲法」で戦争を放棄し、戦力を保持しないと約束した。この前提条件の下で、日本はようやく国際社会への復帰を認められたのだ。したがって、この約束に背くことは許されないのだ。
日本の憲法改正に国際社会が懸念を表明する1つの重要な原因は、現在の日本の政党および制度が第2次大戦中の自国の戦争行為に対して徹底的な省察をしておらず、犯罪行為を犯したことを認めていないからだ。例えば慰安婦問題において日本は「強制連行」を認めず、普通の売春行為だったとしている。現在日本の指導者は、もう戦後の約束を遵守する必要はないと国際社会で公言している。これは非常に危険なことだ。
日本では1990年代からバブル経済が崩壊し、その後20年間経済成長が停滞し、現状に対する不満が社会に蔓延した。これは日本社会全体の意識の右傾化を招いた。多くの政治家は、自らの支持率を拡大するため、こうした社会意識にひたすら迎合している。これに周辺国との関係の緊張も加わって、日本は対外強硬路線を取り、軍事・安全保障も次第に強化し、外交紛争が起きやすくなるかもしれない。自衛隊を国防軍に格上げした場合、より多くの軍事費が必要になり、軍拡競争が多くの社会資源を浪費することになる。これは地域の平和と日本国民の幸福のいずれにとっても無益だ。