中国 世界の工場から世界の投資家へ (2)
中国は米国の状況とは正反対だ。中国は成長を維持するため、投資を継続する必要がある。これは各地で高速道路と空港を新設している国家にとって、容易なことではない。中国が今後十年間に渡り、サービス業を推進し、生産人口の減少の流れに適応するに伴い、投資の需要が減少することになる。
当然ながら、中国の投資率も低下する。日本の1980年代以降の経験を見ると、投資の急減は大規模かつ持続的な経常黒字を生む可能性がある。たとえ貯蓄率が低下し、本国通貨の価値が上昇したとしてもだ。通貨の価値上昇はむしろ外部の利潤を促し、同時に輸出型業界への投資を妨げる。
その影響を受け、金融危機後の世界経済がバランス化を実現することはありえず、大規模なマクロ経済の不均衡が再演される。多くのエコノミストはこの判断を疑問視しているが、過去の歴史からも、不均衡との共存は世界経済の拡張期における法則であることが分かる。
ローマ帝国は数百年間に渡り、インドに対して貿易赤字を維持していた。その結果、金が外部に流出し、ローマ帝国の通貨の価値が下がった。しかしインド?ローマ貿易は、依然として世界経済の礎とされている。
同様に、スペインは16世紀から17世紀に渡り赤字を維持していた。これらの赤字はアンデス山脈のプラチナによって補われたが、これによって生じた流動性の氾濫が世界に繁栄をもたらした。エリザベス時代のイングランドとムガル帝国は、そこから利益を獲得した。高度成長・急激なグローバル化の時代であった1870−1913年にも、バランス化は実現されなかった。資金の提供者は英国で、英国は「世界の銀行」になった。