日本は伝統工芸の保護が進んでいるほうだが、「多くの工芸が急速に消滅している。もう再現できない技術も多い」という。栗川商店では最盛期には年間500万本ものうちわが生産されていたというが、今は20万本にまで激減した。手づくりうちわや手づくり灯篭、鉄を打って作った農具などは、1940-50年代の日本にはたくさんあったものの、一世代で衰退し、今はほぼ消えてしまった。「一人でも多くの人に伝統工芸の美しさを知ってもらうというのが、神様が私にくれた仕事なのかもしれない。私たちは、伝統工芸を受け継いでいくために、一生懸命努力を続けている」と語る下河さんの笑顔からは、大きな責任感も感じられた。
一人でも多くの人に買ってもらい、伝統工芸を守るために、栗川商店はうちわの値段を抑え、無地の普通のうちわは1000円で販売している。うちわ業が危機に瀕していることを知り、社員に配るためにたくさん注文して、伝統工芸を応援しようという現地の企業もある。それでも、栗川商店の売上額は年間わずか3億円と、全盛期の3分の1にすぎないという。
伝統工芸品の需要が減少しているほか、栗川商店も後継者問題に直面している。日本の伝統工芸はかつて、その技術を家族に伝えることを非常に重んじていた。しかし、それでは後継者問題が起きやすいため、伝統業界も少しずつ外部の人にもその扉を開け、若い人が技術を学べるようにするようになっている。河堤大介さん(36)は、日本の伝統工芸に強い興味を抱く若者の一人。熊本市で演出の経営管理の仕事をしていたものの、昨年4月にそれを辞め栗川商店の門を叩いた。「子供のころからアートや創作が好きだった。うちわの製作も好き」と河堤さん。現在、栗川商店でうちわを製作しているスタッフ5人は、下河さん以外は全員30歳前後の若者だ。
近年、日本の社会では自国の伝統や文化に再び目が向けられるようなり、若者が貴重な伝統工芸を知る良い機会となっている。「日本は地震や津波などの自然災害が多い。災害が起きるたびに、多くの人が家族や文化の継承の大切さを思い知らされる。災害が起きると、伝統の大切さが身にしみて分かる」と下河さん。ある意味、社会にとって災害は悪いことばかりではないようだ。(編集KN)
「人民網日本語版」2017年3月31日
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