「名探偵ピカチュウ」が大ヒットした理由は2つにまとめることができる。一つは、映画版の登場人物と、ゲームに出てくるキャラクターがほぼ一致している点だ。サトシやカスミなどは米国の子役が演じ、ゲームに登場する二人よりは年が上であるものの、ゲーマーも成長しているため、その二人も思春期の若者へと成長するというのは筋が通っている。もう一つは、ゲームはシンプルな設定であるのに対して、映画のストーリーは真逆でとても複雑という点だ。それがゲーマーの間でも好評を博している。ゲームを映画化すると、どうしてもそのストーリーに大なり小なりツッコミどころがあるものだ。しかし、「名探偵ピカチュウ」はとても自然なストーリーの設定になっており、一般の人でも楽しむことができ、ゲーマーも新鮮味を感じることができる。それこそが、好評を博している秘訣なのだと言える。
ゲーム原作の映画の多くは興行収入伸びても口コミ伸びず
ここ数年公開されてきたゲームを原作とする映画の多くは、興行収入はそこそこでも、口コミは良くないという状態だった。例えば、「バイオハザード: ザ・ファイナル」の興行収入は約10億元に達したものの、口コミは非常に悪かった。昨年公開された「ウォークラフト」の口コミは、一般の人が「ストーリーがシンプルすぎて、見どころは特殊効果だけ」と評価したのに対して、ゲーム「ウォークラフト」のファンは、「学生時代の思い出が蘇った」と声を上げるなど、完全に二極化した。
しかし、ゲームの映画化というのは想像よりもずっと難しい。ゲームの映画化に数十年チャレンジし続けているハリウッドでも、ヒットした作品と言えば、「トゥームレイダー」、「バイオハザード」、「サイレントヒル」など数作しかない。シリーズ化した作品でも、そのほとんどは口コミが悪く、賞受賞はもってのほか。一般の人に「及第点」をもらうのも至難の業となっている。インターネット・ムービー・データベース(imdb)の統計によると、ゲームを映画化した作品の評価のほとんどは3‐5ポイントの間で、最低の「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」に至っては2ポイント。最高の「バイオハザード」でも6.7ポイントにとどまっている。
ゲームの映画化でもう一つ課題になるのはいかに適度にアレンジを加えるかだ。イメージがあまりに異なってしまうと、ゲーマーの非難の的となってしまう。「名探偵ピカチュウ」の1作目の予告動画が公開された際も、映画とゲームのイメージがあまりにも違っていたため、ゲームファンの間で「ピカチュウに毛が生えている」などのブーイングが起きた。 映画の宣伝担当者も、多くの人にこの新しくアレンジされた「ピカチュウ」を受け入れてもらう必要があることを認識しており、映画上映前に、予告動画を次々に公開して、「毛がある」ピカチュウがSNSで大きな話題になるように取り組んだ。公開前に、すでにイメージ付けができていたため、映画が公開されると、多くの人から「毛があるピカチュウを私も飼いたい」と、そのかわいさを絶賛する声が上がった。「アレンジ」にはリスクが伴うものの、うまくアレンジすれば、その新たなイメージを多くの人の受け入れてもらうことは可能だ。「名探偵ピカチュウ」の場合は逆に、毛のないピカチュウを見ると、「なんか違う」と感じさせるほどだ。