それではなぜ、若い人は「若くない」ブランドを今の自分たちの「情怀」と結びつけるのだろうか。重要な原因として、彼らの年代はライフスタイルの変化が激しく、リアルな記憶をもちにくいこと、同じ市場ニーズをもち続けるのが難しいことが挙げられる。たとえば90後になじみ深い乾脆麺(そのまま食べるインスタントラーメン)などは、健康な食生活を重視する現代社会にあって、主流の市場で居場所がなくなってしまった。
その一方で、一部の老舗は品質が安定して、消費者の基本的ニーズを満たせることから、若い人が「情怀」を託す新たなツールに発展した。若者は子どもの頃に老舗商品について特別な思い入れのある消費体験をしたわけではないが、親世代から「伝え聞いて教育された」ことや、映画やテレビに出てくる老舗が印象深かったことから、気持ちや記憶がかき立てられ、老舗に引き寄せられていった。よく言われるように、「情怀」は失った後で生じるのであり、人はもう手に入らないものに最も強い感傷を抱く。
もう1つの重要な原因は、現代の若い消費者は新しいブランドや西洋のブランドの「魔法が解ける」という体験を繰り返してきたことだ。かつて絶大な勢力を誇った西洋系ファストフードが市場の中で「プチブル」の衣が魅力を失い、庶民化路線を歩んだことはその一端だ。人々は商品がもたらす実際の体験を踏まえて消費を選択するようになり、ブランド名を絶対とするブランド消費信仰はもはや過去のものになった。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年6月10日