よく知られているグリーンカーボンとは、植物の光合成で二酸化炭素(CO2)が吸収されることによって形成されるカーボンシンクのことだ。それに比べると、海洋生物由来の「ブルーカーボン」、すなわち海洋カーボンシンクについては余り知られていない。渤海湾の葦生から珠江河口のマングローブまで、中国は大量のブルーカーボンの資源を秘めている。1月1日に「海洋カーボンシンク計算方法」業界標準が正式に実施され、中国初の総合的海洋カーボンシンク計算標準となった。2月28日には中国初の「ブルーカーボン」競売が浙江省寧波市で成立した。人民日報海外版が伝えた。
ブルーカーボンは海洋カーボンシンクとも呼ばれ、炭素排出権取引の重要な対象だ。自然資源部(省)が発表した「海洋カーボンシンク計算方法」業界標準によると、海洋カーボンシンクとは「マングローブ、塩沼(塩分を含んだ沼地)、海草藻場、植物プランクトン、大型藻類、貝類などが大気または海水から吸収し大気中にCO2を貯留するプロセス、活動、メカニズム」を指す。
それではブルーカーボン取引とは何だろうか。自然資源部の関係責任者は、「国内のブルーカーボン取引は現在主に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に認められる3種のブルーカーボン生態系、すなわちマングローブ、海草藻場、塩沼に集中している」と説明した。
今回の取引が成立した寧波市象山県には、省内最長の海岸線と省内2位の海域面積があり、ブルーカーボン資源量が豊富だ。象山県は昨年7月よりブルーカーボン競売取引を開始し、寧波海洋研究院にカーボンシンク量の計算を担当してもらった。試算によると、同県の塩沼生態系のカーボンシンク量は年間10万2800トンに、のりや昆布を中心とする大型藻類養殖のカーボンシンク量は年間約2万1700トンに、牡蠣を中心とする貝類養殖のカーボンシンク量は年間約3万2200トンにのぼる。
今回の競売にかけられたブルーカーボンは、象山西滬港の「西滬三宝」と呼ばれる昆布、のり、青のりで、いずれも藻類に属する。競売側の一つとしての象山旭文海藻開発有限公司の朱文栄会長は、その養殖する青のりについて、「1キログラムの青のりの苗は1000キログラムの青のりに成長するが、その成長プロセスで海水と大気中の窒素、リン、炭素を吸収し窒素・炭素固定の役割を果たす。一方で、企業が競売にかけるのは青のりそのものではなく、2022年の246.1トンの青のりカーボンシンク量だ。つまり青のりが光合成により固定・貯留した海洋生態系におけるCO2だ」と説明した。
ブルーカーボンはCO2回収の「達人」で、CO2貯留の宝庫だ。ブルーカーボンはグリーンカーボンなどその他のカーボンシンクに比べると、炭素固定量が多く、効率が高く、貯留期間が長いといった特長を持つ。森や草原などの陸地生態系のカーボンシンクの貯留期間は最長で約数十年だが、海洋カーボンシンクは数百年にものぼる。温室効果ガスの排出を効果的に減らし、カーボンニュートラルの目標達成を後押しする面で、カーボンシンクの効果が際立つ。(編集YF)
「人民網日本語版」2023年4月7日