新作「ライフ・オブ・パイ」の少年はかつてのアン・リー監督の姿
新作「ライフ・オブ・パイ」の撮影は、アン・リー監督にとっても特別な体験だったという。1人の少年、1匹のトラ、1隻の船が太平洋で漂流する奇跡の物語。最後にひっくりかえる結末。すべてが映画化不可能に思え、まるで自分が少年パイのように太平洋に漂流しているような孤独や絶望に何度も襲われたとアン・リーは語っている。
この比喩はアン・リー監督の人生にも当てはまる。映画人生においてすべてが順調に見えるアン・リー監督だが、実はそうではないという。漂流する少年パイのもがきは、かつての監督自身のもがきであり、アン・リー監督自身も何度も絶望に陥ったことがあるという。
米国の大学で映画を勉強したアン・リー監督は大学を卒業して6年、満足にやり遂げたものはなかったという。自伝の中で、「何一つ満足に成しえていない状態なのに、家には子供がいて面倒をみなければならなかった。初めの頃は、それでも自分の夢や理想を語っていたが、それから3、4年がたち、40歳に なったときも、状況は何一つ変わっていなかった。その頃の自分は、今さら理想を語るのも申し訳ない気持ちで、深く内にこもった引きこもりのような心理状態だった。この期間、私は時々人の手伝いで映像を撮ったり、機材を扱ったり、編集などを行っていた。といっても、小さな劇団の雑用であり、たいした事はしていない。後に日雇い労働者の仕事もした。そのときの自分にとって、唯一絶望を和らげるものは、映画に対する夢だった」と述べている。
夢をあきらめずに、40歳を過ぎてから監督して大きな成功をつかんだアン・リー監督。中国の文化を背景に、西洋社会に深く溶け込み、世界的な活躍をみせるアン・リー監督の姿が多くの中国人の心を勇気づけている。(編集MZ)
「人民網日本語版」2013年2月18日