中国大作映画に求められる「文化性の向上」
驚異的な興行収入を記録した中国のコメディー映画「人再◆途之泰◆(Lost in Thailand)」は、中国映画界における2012年の国産映画シェアを45%から48%に引き上げ、ハリウッド映画が幅を利かせる状況のもと、国産映画の立場と尊厳を固守した。庶民感あふれるコメディーの同作品は、国産映画としてハリウッド映画の進撃を堂々と受けて立った。独特の方言によるセリフや会話の言い回しが、中国人の民族意識を呼び起こした。さらに喜ばしいのは、この映画が孤軍奮闘しているわけではないという点だ。ここ数年は、中国映画が単身で突撃し危機を救う場面が何度も生じ、低予算・中予算の「ダークホース」作品がいくつか登場、ハリウッド映画進出による劣勢からの挽回に奮闘してきた。人民日報が報じた。
しかし、喜んでばかりはいられない。中国は、国内映画産業の内部環境にも注意を向ける必要があり、その産業連鎖は、依然かなり脆い状態であるという事実を認めるべきだ。10年に及ぶ業界改革を経て、中国の映画市場は、興行収入、スクリーン数、映画生産量など多くの項目で、世界第2位にまで躍進し、世界中から注目された。しかし、粗放型の産業がある程度まで成長すると、「上映スケジュール調整体制が整っていない」「秩序ある市場競争システムが確立されていない」「映画制作側と映画館側の売り上げ配分をめぐる論争」など、市場内部でかみ合わなかったさまざまな局所的問題がより顕著化した。その中でも特に核心的で目立った問題は、「中国映画における文化の構築」に関する問題だ。
製作費・作品規模いずれも極めて大きい商業大作映画は、文化的レベルの向上を早急に実現する必要に迫られている。さもないと、中国映画の文化芸術面での品位がいつまでも備わらず、このままでは価値観の表現も難しくなる。映画産業の属性については、ここ数年かなり重視されている。このため、商業大作映画の製作・資金投入には、興行成績が重んじられるが、映画の美学は軽んじられるという現象が目立ってきている。2012年7月、映画製作費1億5千万元(約23億7800万円)、最終興行収入7億元(約111億円)に達した「画皮?」は、「中国版ホラー」というジャンルでの表現方式に大革新をもたらしたが、商業マーケティングの点では限界があり、3D効果が粗製乱造状態で、画面では血生臭いシーンが多く、美学的には内容は空っぽだった。業界専門家は、「興行収入は最高・評判は最低と『一番』が2つ」と同作品を酷評した。