ピーター・チャン監督作「中国合夥人」 我々が実現させた「中国の夢」 (2)
■主演俳優3人がやり遂げた「中国の夢」
「中国合夥人」の主人公3人には中国大陸部の3大人気俳優である黄暁明(ホァン・シャオミン)、◆超(デン・チャオ)、◇大為(トン・ダーウェイ)がそれぞれ扮している。3人はいずれも過去のイメージを覆し、キャラクターに深く入り込んだ演技を見せ、映画の出来に貢献している。特に、見直したのは、かつては「顔だけ」と演技力不足を指摘されたこともある黄暁明だ。劇中では主人公が徐々に成長していく様を段階的に表現している。農村出身の田舎者だった主人公が、生え際が後退して「海外留学の父」と呼ばれるようになるまでの過程を、ためらいのある顔から確固とした信念を持つ顔へ、単純な性格から複雑な感情を持ち合わせる大人へと変化する様を見事に表現してみせた。成東青の彼女がアメリカ留学のビザを取得したと聞いた時の愕然とした表情や王陽が結婚式を挙げた後、親友2人が会社を辞めたいと言った時、言葉を無くし、我を忘れたように大声で泣くシーン、エピローグ間近の数分間に及ぶ英語のスピーチのシーン。いずれのシーンも、黄暁明が見せた演技が印象深く、忘れられない。
■香港の監督が実現させた「中国の夢」
香港の陳可辛監督は、夢、友情、愛情を巧妙に結びつけ、青春のエネルギーを欠けさせることなく、人を誠実に励まし、中国大陸部の時代の鼓動にあった映画を作ることに成功した。陳可辛監督は「新東方教育科技集団」の創業者である兪敏洪氏に会ったことがないことを認めているが、事のはじまりは、中国の映画会社・中国電映集団の韓三平氏が陳可辛監督に「新東方教育科技集団」の共同創業者である徐小平が書いたシナリオの第一稿を見せたことによる。その後、ドラマ性を強めるため、「クレイジー・ストーン」(原題:瘋狂的石頭/2006)の脚本家である周智勇氏と新世代の脚本家の張翼重氏にリライトを依頼し、オリジナルとは大きく異なる今の脚本が出来上がったのだという。
ビジネスを題材にしたこの映画について、陳可辛監督は台本の中に描かれている紆余曲折についてあまり理解できなかっただけでなく、株式上場や買収などのビジネス専門用語についても、必死に勉強をしてようやく少し理解できるぐらいだったという。しかし、このことが陳可辛監督のこの映画を撮る決意を揺るがすことはなかった。創業の物語はただの外郭であり、映画として描くテーマは、ビジネスという衣を身に付けた人々の「失われた童心」である。人は成長や歳月、お金のために、徐々に純粋さを失っていく。陳可辛監督は、「多くの人が私に『ラブソング』(原題:甜蜜蜜/1998)のような映画を撮って欲しいと希望していることを知っている。しかし、私にはもうあのような映画は撮れない。人は変わるものであり、人生の異なる段階でまた違ったものを作るものだ」と語る。この「中国の夢」の物語の中では、陳可辛監督自身もまた、夢を追いかけるごく普通の人物に過ぎない。