成功を焦る中国アニメ 「慌てない慌てない」
アニメ産業の発展のために展開されている政府の一連の事業戦略によって、中国の国産アニメの製作本数は飛躍的に増加し、現在中国全国でアニメ製作に携わる企業はすでに500社を超えた。しかし、繁栄するアニメ産業の陰で、「規模は大きいが、質は高くない」という中国のアニメ産業が抱える問題が日増しに表面化してきている。中国産アニメをいかに健全に発展させるかという課題について、業界関係者たちは、国家新聞出版広電総局と浙江省が杭州で共催した第9回中国国際アニメ祭のシンポジウムの場で建設的な意見を交した。「光明日報」が伝えた。
■中国アニメ 短期的な視点で、結果や利益を求めてはならない
近年、政府が推進する各種政策の保護の下、国産アニメの製作本数は飛躍的に増加し、2004年から2010年のたった7年間で、50倍となった。これにより中国は、米国、日本、韓国などを抜き、世界で最も多くのアニメ製作本数を誇る国となった。2011年、中国が製作したテレビアニメの尺は26万分となり、2位の9万分の日本をはるかに上回っている。国家新聞出版広電総局宣伝管理司の高長力・司長は「中国アニメ産業の発展の道は米国や日本、韓国とは異なり、OME生産や川下製品として発展を始めた。現在でも、このことが中国のアニメ製作の発展に貢献してきたことを否定するべきではない」として、「たとえ、国産アニメに対し多くの批判が向けられているとしても、実際は全体的な質も大幅に高まっており、人気のある優れた作品も出てきている」と中国アニメの現状をある程度評価。
一方、直面している課題についても、「我々が冷静に認識しなければいけないのは、優れた国産アニメの本数や影響力が、世界のアニメ先進国の水準や国民の期待値にはまだ遠く及ばないということだ。国家新聞出版広電総局が行っている優れたアニメを表彰する賞の中でも、特等賞は3年連続で該当作品なしとなっている。これは中国アニメ界が直面している苦境を示している。焦って実績や利益を手に入れようと、あらゆるところで、平凡でありふれたアニメを川下製品として広告にしたり、チャンネルを維持するために、短期的な視野で無料あるいは有料で質の悪いアニメを放映したりしている。このような低いレベルの生き残りや成長スタイルでは長く持つはずがない」と指摘した。
中国アニメ学会と北京大学文化産業研究員が共同で発表した報告書「2013中国アニメ産業年度発展輯要」によると、2012年は国産アニメの製作本数における成長速度がこれまでより鈍化した。1年で製作されたアニメ作品は前年比15%減の約22万分で、2008年以来のマイナス成長となった。また、2012年にアニメを製作した中国企業は2011年より9社少ない約215社となり、これも2008年以来のマイナス成長に転じた。中国中央テレビ局(CCTV、日本のNHKに相当)児童チャンネルの総監・庄殿君氏はこれについて「製作本数の落ち込みは決して悪いことではなく、これは科学的な成長、理性の回帰とする見方の方が強い」として、「製作本数はすでにある程度の水準に達しており、現在はいかに品質を高めるかについて真剣に研究・解決することに力を入れなければならない」と語る。
■鍵は美しいイメージと優れたストーリー
ニュージーランドの児童文学の作家・アニメ監督のMartin Baynton氏は「現在、中国のオリジナルアニメが一様に追求しているのは技術面であり、どれも中身が欠けている」と鋭く指摘する。「技術が急速に発展する時代だからこそ、アニメ製作者は、アーティストの内心世界を表現する『アニメ』の定義を把握し、あらゆる技術と画面を、物語を語るために使うべきだ」と語る。
現在、中国の児童は大部分が一人っ子であり、同年代の友達に欠け、仲間や彼らとの交流に飢えている。このような状況下で、心の中にある善良で美しいものは容易にアニメの世界に共感し、それを肯定する。我々が優れたアニメのイメージを作ることは、次世代の子供たちに良き手本を作ることでもある。この意義において、アニメのイメージは必ず現実的な意義を持ち、主流の価値観や判断基準に合ったものにすると同時に、児童の審美眼や嗜好も考慮しなければならない。