3つのシーンから読み解くASEAN外相会議 (2)
■シーン2:フィリピンが再び「攪乱者」を演じる
6月30日の会議開幕当日、フィリピン側は会議現場で突然、フィリピン外務省のメディア向け声明を報道陣に配布した。この声明で同国のデルロサリオ外相は「南中国海での中国の深刻さを増す軍事化戦略は地域の平和にとって脅威だ」とした。
ASEAN外相会議のたびに南中国海問題を煽り立てることは、すでにフィリピン外交の「お決まりの動き」となっている。昨年カンボジア・プノンペンで第45回ASEAN外相会議に出席した際もフィリピンは声明を配布し、黄岩島(スカボロー礁)問題を共同声明に盛り込むことに反対したことで議長国カンボジアを糾弾し、会議発足後初めて共同声明を発表できないという事態を招いた。フィリピンは今回同じやり口を再び使った。デルロサリオ外相は「中国の行為は、南中国海の領有権主張国は緊張状態を高める恐れのあるいかなる行動も取らないことを約束すると定めた、2002年の『南中国海における関係国の行動宣言』に違反する」と主張した。
シンガポール・南洋理工大学RSISの南中国海問題の専門家、李明江氏はメディアの取材に「フィリピンの今回の行為は明らかに、他のASEAN加盟国と相談せぬまま一か八かの勝負に出た挑発であり、非常に明確な意図を持つ。つまり『ASEAN諸国共通の声』という幻影を作り出すと同時に、中国をむやみに非難する。また、ASEAN諸国および国際世論の同情と支持を得ることだ」と指摘した。
だが中国側の姿勢が明確で、一貫しているのは明らかだ。つまり南中国海問題において中国とASEANには「南中国海における関係国の行動宣言」が拠り所としてあり、直接の当事国による友好的協議・交渉を通じて平和的に係争を解決すべきだというものだ。したがって、フィリピンが再び冒頭から騒ぎを起こしても、他の国々の賛同を得ることは難しく、外相会議宣言にその意図が盛り込まれることもない。
外交部(外務省)の華春瑩報道官は1日「中国側には十分な誠意と辛抱強さがあり、引き続き直接の当事国との対話や交渉を通じた係争の適切な解決に尽力する。だが個別の南中国海の領有権主張国は、もし対抗を選択するのなら、絶対に活路はない」と表明した。