競争が激しさを増す中国では近年、故郷を離れて北京や上海などの都会で働く子や孫に付いて、慣れない都市で孤独な生活を送る親世代の層「老漂族」が増えつつある。「新華網」が報じた。
中国東北地方出身の李麗霞さん(女性)もその一人だ。東北から孫を連れて北京に移り住んでまもなく2年がたとうとしている。故郷の親戚たちからは、北京で孫と一緒に晩年を楽しみ、さぞかし快適だろうとうらやましがられている。しかし、李さんはそう思っていない。夫は退職後、再雇用され地元で働き続けている。いままで離れて暮らしたことがなかった二人は、この年にして初めて「別居婚」の日々を送るようになり、李さんは北京で孤独を感じながら生活している。
北京にいる李さんは離れて暮らす夫のことが常に気掛かりで、毎日電話をして近況を聞く。電話口で夫にかける言葉は、天気の寒暖についてや、寒くなったから厚着をするようにとか、出かけるときに鍵を忘れないように、などといったごくささいなことだ。しかし、実家に戻れば、今度は逆に子供のことが気に掛かる。李さんは「私が実家に戻れば子供が不便で慣れないのではないかとか、いろいろなことが心配になる」という。北京では、しばしば感情に波が出て、息子や嫁と口論したり、時折「荷物をもって実家に帰る」と怒鳴りちらすこともあるという。だが、息子が困った顔をするのを見ると、後悔する。
「子供は近くにいても、『幸せ』とは距離がある」と李さん。李さんのような「老漂族」は喜んで一家の「後方支援隊長」として娘や孫のために毎日洗濯や食事作りに勤しみ、友人のいない異郷の地に住む寂しさにも耐える。子供たちとの団欒がもたらす喜びはあるが、同時に孤独と悩みも抱えている。また、「老漂族」は、比較的恵まれた物質的条件を持っているにもかかわらず、より精神面で満たされることを強く望んでいる。築いてきた友人関係が断ち切られ、交際範囲が狭まり、言葉が通じないといった従来とは異なる環境は彼らに新たな悩みをもたらす。
山東省威海市出身の叢さんの場合は、恐らく多くの「老漂族」と比べれば、妻と離れて暮らす必要もなく比較的恵まれているかもしれないが、それでも人生の大半を過ごしてきた土地から離れて北京で暮らす生活は、時に寂しさや孤独が知らぬまに心の中で湧き上がってくるという。「年をとって、本当ならゆっくり生活を楽しむはずが、逆に新しい環境に慣れなくてはいけなくなるなんて」と叢さんは言う。さらに「食材の買い物や食事の用意、孫の相手など、我々年寄りにはなかなか口が出せない。 方言は今さら直そうとしても難しいが、近所の人たちは方言を聞き取ってくれない。遠い場所は怖くていけないし、いつもマンション内と周辺を散歩するばかり」と語る。
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