スイスUBS銀行顧問「中国の持続的な成長は世界に有益」
国際通貨基金(IMF)は、2013年から2014年にかけ、中国の成長率は7.75%前後で推移し、2年前の中国の経済成長率に対する国際的な予想をおよそ2%下回ると考えている。だがこの予想は中国の思惑と一致しているといってよく、中国の経済成長率は7%から8%の間で成長を続けるだろう。経済学者の多くは、中国は穏やかな成長へと徐々に転換を始めたとみており、中国はこの転換期を過ぎるころの成長率は6%かさらに低くなるだろうと予想している。これに対して、われわれはいくつかの側面から展望・分析を行う。(文:ジョージ・マグナス・スイス金融大手UBS上級経済顧問。人民日報掲載)
第一に、中国経済減速の背景には、深遠な意味を持つ成長戦略の転換がある。それはバランス成長への転換だ。これは中国経済が発展する過程でおこった都市農村問題、製造業、サービス業間の問題、成長に伴う環境問題などのバランスの課題だ。中国経済の成長パターンの転換は今、挑戦段階にあり、新しい成長モデルを構築する一方、旧型モデルの残した数々の影響に対応しなければならない。これには、過剰投資、過剰与信による成長促進、インフラ建設業界や製鉄、コンクリ、造船、不動産などの業界の過剰な生産能力などが含まれる。
第二に、中国経済の成長鈍化は、不可避だが、ある程度の制御は可能だということだ。これまで長年にわたる中国の高度成長はまねできないものだ。労働適齢期人口の拡大、農業労働力が高い生産性をもつ製造業労働力への転換、児童の高い就学率、インフラ建設やWTO加盟など多くの要素が絡み合っている。しかも、中国の持続可能な成長は、主に資本構成や労働力の質の向上、経済学者が強調する「全要素生産性(Total Factor Productivity)」が源になっている。いいかえれば、投資効率の改善により成長を勝ち取ることだ。これにはインフラ、電力、エネルギー、ヒューマン・キャピタルなどの分野が含まれる。全要素生産性は、まさに今後の中国経済成長のカギを握る要素で、これには、強い政治経済の管理運営能力、収入と富の配分の改革、市場主導の政策フレームワークなどが必要だ。