国際労働機関(ILO)はこのほど、「2018/2019世界賃金報告(以下、報告と略)」を発表した。これによると、各国の名目賃金を統一通貨(ユーロ)に換算した後の賃金額世界トップ5ヶ国は、順に、デンマーク、ルクセンブルク、ノルウェー、オーストリア、米国だった。
トップのデンマークの名目賃金は1ヶ月5324ユーロ(1ユーロは約128.5円)だった。世界で名目賃金が最低だった国は、アフリカとアジアに集中しており、ランキング最下位は56.73ユーロのルアンダだった。
報告によると2017年、世界の賃金上昇率は、2008年以来最低水準となり、2008年に起こった国際金融危機以前の水準よりもはるかに低かった。その一方で中国の賃金上昇率は、世界トップクラスに入っている。
〇世界の流れとは逆に成長を拡大させている中国
世界136ヶ国における2006年から2017年までの物価変動の影響を除く実質賃金に関する統計データによると、実質賃金にもとづき計算したところ、2016年時点で2.4%だった世界の賃金上昇率は、翌2017年には1.8%まで低下した。
ILOのガイ・ライダー事務局長は、「初期の兆候から、2018年の世界賃金成長は、引き続きスピードダウンが続くと予想され、賃金成長が停滞し、成長しない状況は、グロ―バル経済の発展を推進し、世界各国国民の生活レベルを引き上げる上での障壁となっていることが伺える」とコメントした。
「2018/2019世界賃金報告」
世界賃金の上昇スピードは緩慢になっているとはいえ、アジア地域での賃金上昇は、引き続き力強い傾向を呈している。報告によると、過去20年間、G20に加盟している新興国と発展途上国の平均実質賃金は倍近く上昇した。一方、発展途上国の成長率は9%にとどまっている。
ILOは、「2006年から2017年の間、アジア・太平洋地域の労働者の実際賃金の上昇率は、世界の全地域の中で最も高かった。これは、アジア・太平洋地域の経済成長が他の地域より速い事実を反映しており、中国、インド、タイ、ベトナムの各国がトップに名を連ねている」としている。
「2018/2019世界賃金報告」
中国の巨大な人口とスピーディな賃金上昇が世界平均レベルに影響を及ぼしていることは明らかであることは注目に値する。中国を除外した場合、世界の実質賃金成長率は、2016年の1.8%から2017年には1.1%まで低下することになる。
クレディ・スイスの予測によると、今世紀半ばまでに、アジア地域の新興国の世界経済に対する寄与率は55%に達する見込み。2008年の金融危機以降の10年間において、世界の賃金成長に対する中国の寄与率は、ほとんどの年において年成長率のほぼ半分に相当している。
〇大きい男女の賃金格差
また報告によると、世界規模で女性の平均賃金は、男性に比べ約20%低い。
ILOは、「富裕国では、男女の賃金格差は、おもに高額所得者層に見られる。一方、中・低所得国家においては、男女の賃金格差は、低賃金の労働者層に顕著化している」と指摘する。
ILO国際労働機関の計量経済・賃金関係専門家であるRosalia Vazquez-Alvarez氏は、「多くの国家では、女性の学歴は男性を上回っているが、収入については、男女が同じポストについていても、女性の収入は男性より低くなっている」と指摘した。
このほか、賃金格差に影響を及ぼすもう一つの要因は、「母親という立場」にあるとしている。
報告によると、子供がいない女性と比べ、働く母親の賃金は、低く抑えられている場合が多い。これは、キャリアが一旦中断すること、就労時間が減ること、低賃金でも家庭との両立に有利な職に就く傾向が高いことなど、複数の要因が絡んでいる。
ILOのライダー事務局長は、「男女の賃金格差は、今の社会で最も不公平な問題の一つである。あらゆる国家は、その背後にある原因をしっかりと把握・理解し、『賃金の男女平等』を1日も早く実現できるよう努めなければならない」と強調している。(編集KM)
「人民網日本語版」2018年12月12日
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