全てが順調に進んだことで、布仁さん夫婦は「起業」に対する意欲をさらに高め、2016年に会社を立ち上げた。そして、地元にある豊富な羊の油を活用して羊油石鹸の生産を始めた。しかし、その経営はすぐに軌道に乗ったわけではない。二人が最初に研究開発した羊油石鹸は、形が悪かったことや羊油独特のにおいがきつかったことなどが原因で、全く売れなかった。「当時、スタッフみんなショックを受け、残ったスタッフは5人だけだった。会社の資金も底をついてしまった」と布仁さん。
しかし、「僕たちが採用しているのは低温でゆっくりと時間をかけて石鹸を作る『コールドプロセス法』。質の高い植物油の成分を劣化させることもなく、草原の水源を汚染することもない。さらに、地元の遊牧民の所得も増える。これが、がんばり続けてきた理由だ」と説明する。
起業から5年間で布仁さんは貯金や起業支援資金など全てをつぎ込んで、1500回以上の実験を行い、100種類以上の油脂原料をテストし、ついに、羊油独特のにおいを消すことに成功した。
そのような努力が無駄に終わることはなく、先月、布仁さん夫婦が作る羊油石鹸に、日本から注文が入った。布仁さんは、「今回、羊油石鹸を合計約2000個輸出する。価格として約6万元相当。初めての輸出の注文で、額は大きくないが、地元の農畜産物を加工して輸出する前例を作ることができた。羊油石鹸の形、質、においなど全てのハードルを越えたということだ」と常に前向きだ。
そして、「妻は博士課程を修了し、僕も経営学修士(MBA)を修了している。帰国したのは、自分たちの知識や経験を活用して、何かしてみたかったから。海外で暮らしていたころは、みんなに羨ましがられていたが、あまり心地よいものではなかった。帰国して、起業し、生きがいを見つけることができた」と話す。(編集KN)
「人民網日本語版」2019年5月8日