映画監督の陳可辛(ピーター・チャン)監督がこのほど、女子バレー中国代表チームの元監督・陳忠和や「黄金時代」を築いた元選手らと共に、福建省福州市で開催された第6回シルクロード国際映画祭に登場し、注目を浴びた。陳監督がメガホンを取り、女優の鞏俐(コン・リー)らが主演の映画「中国女排(中国女子バレー)」は、2020年の春節(旧正月、2020年は1月25日)映画として公開される。その他にもテニス界のスター・李娜(リー・ナ)がヒロインの映画「李娜」や卓球がテーマの映画「中国ピンポン」など、スポーツ映画が来年続々と封切られる。新華社が報じた。
このようにスポーツ映画が続々と公開されることで、これまで中国が苦手としていた同分野の映画にとって、来年は大躍進の1年となるのだろうか?
常に伸び悩んでいた中国のスポーツ映画
ピンポン外交や、黄金時代を築いた女子バレー、ロサンゼルス五輪で、中国選手として史上初めてフリーピストルで金メダルを獲得した許海峰、北京五輪の開催など、スポーツをめぐるトピックスも、新中国成立後の非凡な歴史の一部分であり、中国の人々の心と記憶にしっかりと刻まれている。一方、中国国産映画市場を振り返ると、スポーツをテーマにした映画は散々たる状態で、好評を博し、ヒットしたと言える作品はほとんどない。スポーツ映画の名作というと、多くの人が「女籃五号(Woman Basketball Player No. 5)」や「沙鷗( The Drive to Win)」といったやや古い映画を思い出すだろう。香港地区の林超賢(ダンテ・ラム)監督がメガホンを取り、俳優の彭于晏(エディ・ポン)らが主演の「激戦(ハート・オブ・ファイト)」、「破風(疾風スプリンター)」などでも、興行収入は1億元(1元は約15.35円)を少し超えたほどで、「大ヒット」と言うにはほど遠かった。
中国で大ヒットするスポーツ映画がなかなか誕生しない主な理由は、「スポーツ界の人は映画の世界のことが分かっておらず、一方の映画人もスポーツのことが分かっていない」からだ。陳監督は、シルクロード映画祭で、「これまでに撮った映画の中でも、『中国女排』は最も難度が高い作品だ。現場でたくさんのコーチが難関をクリアできるようサポートしてくれている。しかし、ナイスプレーとそうでないプレーの見分けが、僕には全くつかない」と率直に語った。
アスリートはプロフェッショナルで、その役を務めるとなると、体つきや運動神経などの面で、役者は高いハードルをクリアしなければならない。「破風」で、プロのロードレーサーを演じた彭于晏は、毎日、約10時間自転車の練習をしたという。また、「翻滾吧!阿信Jump Ashin!)」で、体操選手を演じた際は、半年間体操を習った。
動画配信サイト・愛奇芸影業(iQIYI)の亜寧総裁は、「これまで、中国のスポーツ映画の興行収入が全く伸びなかったのは、公開当時のトレンドとも大きな関係がある。『激戦』が公開された頃は、歴史もののファンタジー作品が流行していたため、映画館に足を運んでいたのは女性がメインだった。女性はボクシングにはほとんど興味がなかった」との見方を示す。
業界関係者は、スポーツ映画が、他の作品を超える存在感を示すためには、ストーリーをおもしろくしなければならないと強調する。インドの山河影業の最高経営責任者(CEO)は、シルクロード映画祭で、「インド映画の『ダンガル きっと、つよくなる(Dangal)』が中国でも好評を博した理由の一つは、『実話』を基にしたストーリーだったから。さらに、主演を務めた俳優のアーミル・カーンの役どころがうまくはまっていた」と語った。