中国共産党中央委員会が発表した今年の「1号文書」は初めて、食糧生産能力を5000万トン増強するという目標を打ち出している。実現すれば、中国の食糧生産能力は7億トン以上という大台に達することになる。すでに高い生産能力を備えているにもかかわらず、さらに5000万トンの増強を目指すのはなぜなのだろうか?
中国農業農村部(省)農村経済研究センターの研究員・曹慧氏は、「生産能力は生産量の基礎で、一定の食糧生産能力がなければ、必要な時に必要な分を生産して供給することができない。全体的に見れば、現時点で、中国の食糧安全は保障されているが、基礎はまだ不安定で、食糧安全も依然として厳しい情勢が続き、世界と中国国内の2つの要素に注目する必要がある」との見方を示す。
世界に目を向けると、ロシア・ウクライナ紛争が勃発して以来、世界の食糧安全状況は、以前よりも厳しくなり、その影響が今年も続いている。国際連合食糧農業機関(FAO) の1月の報告によると、ウクライナの厳しい財政制限や一部の地域の農家が作付けできなかったといった複数の原因が重なり、冬小麦の栽培面積が前年同期比で約40%減少した。また、世界の天然ガス価格も不安定で、化学肥料の価格も高騰を続けている。それにより、世界の化学肥料の使用量が減少し、食糧の生産量に影響を及ぼす可能性が高まっている。
中国国内に目を向けると、食糧の供給と需要は長期間にわたりぎりぎりバランスを保っている状態にある一方で、消費量は上昇の一途をたどっている。消費構造は穀物や野菜といった植物性消費をメインとした単一スタイルから、動物性と植物性の消費が両方重視された多元化スタイルへと移行しており、大豆や油脂原料の自給率が低いことや飼料作物の生産が需要に追い付いていないといった問題が依然として存在している。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年3月1日