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山の起伏に沿って建てられたトキの野生復帰順化ゲージ |
河南省董寨国家級自然保護区に入ると、高さ約30メートル程の尖った円形の屋根を持つ緑色の巨大ケージに目を奪われる。ケージの中で空に飛び立ち、優雅に空中で旋回している白い大きな鳥が、「吉祥鳥」と言われる国際保護鳥トキだ。中日合同プロジェクト「河南省羅山県自然保護を通じた生活環境改善計画」の一環として河南省董寨国家級自然保護区に建設していたトキ野生復帰順化ゲージの竣工式が5月30日、現地で行われた。「人民網」が伝えた。
河南省董寨国家級自然保護区は2007年からトキの人工飼育と繁殖を開始した。6年間の不断の努力によって、現在、トキは当初の17羽から120羽以上まで増えた。人工飼育のトキを野生に戻した後、順化できるように、飛行や自力で餌を取るようにさせる訓練をこのケージ内で行っている。
日本国際協力機構(JICA)の中日協力プロジェクト「人とトキが共生できる地域環境づくりプロジェクト」の担当責任者、森康二郎氏によると、今回の中国河南省董寨国家級自然保護区のトキ順化ケージの建設には、総計約280万元(約4589万円)かかったという。同保護区管理局が準備した資金のほかに、在中国日本大使館による草の根・人間の安全保障無償資金協力「河南省羅山県自然保護を通じた生活環境改善計画」やJICAの中日協力プロジェクト「人とトキが共生できる地域環境づくりプロジェクト」で計150万元(約2458万円)の補助金が支給された。同時に、ケージの設計・建設やトキ野生化訓練などの取り組みも中日両国の職員が協力し合って推進していく。
国家林業局対外合作プロジェクトセンターの劉立軍副主任は竣工式で、「1982年にスタートした中日のトキ保護プロジェクトが現在、このように素晴らしい成果を挙げたことを大変うれしく思う。両国の協力により、日本のトキを個体群の規模にまで繁殖させ、さらに野外で飛行させることにも成功した。中日間のトキの保護分野の協力で最も成功した模範例であると同時に、中日友好協力の模範例といえるだろう」と語った。
初めに選ばれた人工飼育のトキ34羽は今年の3月15日にケージに入れられ、野生復帰に向けた訓練が開始された。同保護区管理局の阮祥鋒局長は「計画によると、これらのトキは今年の8、9月ごろに野外に放たれる予定。もしかしたら、来年や再来年にはトキが河南省董寨国家自然保護区の空を飛んでいる姿を見られるかもしれない」と語った。
竣工式には、中国国家林業局保護司の豊萍氏・副司長や国家林業局対外合作プロジェクトセンターの劉立軍・副主任、河南省林業庁の張継敬・副庁長、日本環境省自然環境局自然環境計画課の亀澤玲治課長、在中国日本大使館の岡崎雄太・一等書記官、JICA中国事務所の宮崎卓・次長ら計約20人が出席した。
■国際保護鳥トキについて
トキは現在、世界で絶滅の危機に瀕している鳥類で、歴史的には中国、朝鮮半島、日本などに広く生息していた。しかし、現在、農薬の大量使用や環境の悪化などの原因により、トキは深刻な生存危機にさらされている。2003年に日本の野生トキは絶滅した。中国でもトキは絶滅したと思われていたが、1981年に陝西省洋県で新たに7羽のトキが発見され、国内外で極めて大きな注目を集めた。30年の不断の努力により、中日両国のトキの数は現在2000羽以上に増えた。
■「人とトキが共生できる地域環境づくりプロジェクト」
2010年5月から5年間の予定で、陝西省洋県(トキ国家級自然保護区)、寧陝県、河南省羅山県(河南省董寨国家自然保護区)の3つの地域で実施されている。
トキの繁殖・人工飼育による保護や人工飼育個体群を野生に復帰させると同時に、有機農業やエコツーリズムの発展などを通して、現地の市民の生活水準を上げ、トキと人が共生できる環境づくりを趣旨としている。(編集MZ)
「人民網日本語版」2013年6月3日
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