感染拡大、甘い認識 6人死亡の病院、不手際認める
宮崎県日南市の東病院で起きたノロウイルスとみられる集団感染。大流行への備えが叫ばれているなかで入院患者6人が相次いで死亡する事態に、病院は感染予防の不手際を認め、謝罪した。当初ノロウイルスの感染を疑っておらず、気づかないうちに感染を広げていた可能性がある。
東病院の宮路重和理事長は、23日に宮崎県庁で開いた記者会見で「6人の方がお亡くなりになって、大変申し訳なく遺憾に思っています」と頭を下げた。
東病院は主に寝たきりの患者が入院。口から食事がとれず、おなかに穴をあけて胃に管を通して栄養分を入れる胃ろうをつけている人も多い。相部屋と個室があり、死亡患者は全員同じフロアにいたものの、同室は2人だけで、残る4人は別々の相部屋にいた。患者が自分で感染を広げることはなく、職員が院内で感染を広げた可能性が高い。
今冬はノロウイルスが2006年以来の大流行になりそうだと国などが盛んに警戒を呼びかけていた。感染力が強く、高齢者は感染すると死に至るおそれもある。手洗いや消毒、エプロンの使い捨てなど感染予防をあらかじめ徹底する医療機関も多い。
それなのに東病院が集団感染に気づいて県に報告したのは、最初に発症した患者の死亡から3日後。ノロの潜伏期間は1-2日。病院が認識する前に感染が広がっていた可能性がある。
報告を受けた県は18日に立ち入り検査。使い捨てエプロンを一日中使い続けるなどの実態を見つけ、使うごとに捨てるよう指導。死亡例や患者増があれば追加報告するよう求めた。
しかし、東病院はその後も、入荷が難しいことを理由に使い捨てを徹底しなかった。常勤医2人のうち集団感染に対処したのは1人だけ。感染者は増え続け、19、21日にも死者が相次いだが、死亡例を報告したのは県が2度目の立ち入り検査に入った22日になってから。この時、汚物処理をした職員が手袋を外してからエプロンに触っているなどの不適切な実態も明らかになった。
宮路理事長は「隠したのではない。自分たちで対応しなければいけないと感じていた。発症を報告したことで、つい安心していた」と釈明した。
瀧口俊一・県日南保健所長は「おむつを交換する時が一番の感染源。手袋などの使用法が十分に徹底されていなかった。病院側に不備があったと思う」と話した。県は17日に最初の報告を受けたが、その時点では特異な事案ではないと考え、発表していなかった。
asahi.com 2012年12月24日
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