だが「月宮1号」では人間が支配者であり、すべては人のために設計されている。「人が食べたいものを植える。栄養や酸素、水など人の必要に基づき、各種の植物や動物、微生物を選ぶ。これらの生物をまとめるための設計を正確な計算によって行う。システム運用時に起こった偏りは人工的に調整して正常な運行を保証する」
米国やロシア、欧州も関連技術の研究を進めているが、近年は大型システムの実験は行っていない。
「多くの国の政府は、地球外への基地設立は遠い未来のことだと考え、大規模な投資を急ごうとはしない。だがこの種のシステムは非常に複雑なものだ。それぞれの生物が複雑である上、多くの生物を1つの生態系にまとめる複雑さは並大抵のものではない。技術を成熟させるには長期間にわたる実験の継続が必要で、宇宙への投入もそうして初めて可能となる」と劉さんは語る。
▽月面生活との違い
「月宮1号」の環境と月面との違いは、月の重力が地球の6分の1しかないことから来る。将来の月面基地の作業者は、低重力環境の下での活動に適応しなければならない。
このほか月面の放射線の高さや低重力が生物系にどう影響するかは、科学者にも明らかになっていない。
「こうした問題を明らかにするためには、宇宙での実験が不可欠となる。関連部門には、実験の機会を与えるよう促したい。宇宙での実験には、小型の『月宮1号』を2つ作り、1つは月探査器に搭載し、1つは地上に設置する。宇宙に送ったシステムのデータと地上のシステムのデータを比較分析すれば、システムの矯正が可能となる。そうすれば地上の大型システムの実験データを月面にも応用できるようになる」と劉さんは指摘する。
劉さんによると、今回の実験の目的は理論・方法・技術の論証で、成果は予想以上のものだった。今後は、見つかった課題の改良のための研究が進められる。(編集MA)
「人民網日本語版」2014年6月30日