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内モンゴルで活躍するボランティア日本語教師 浦井智司さん

人民網日本語版 2015年08月27日17:19

 中国内モンゴルへの派遣が決まった時、私はまだタイで日本語教師をしていましたが、その際中国の対日感情悪化のニュースに接したのを覚えています。今思えば、蒸し暑い国から寒く乾燥した地域へ、親日と言われるタイから中国への移動は大きな挑戦だったように思います。

 そんな私が中国に来てからボランティアとして活動した2年間を簡単にまとめたいと思います。

 内モンゴル自治区赤峰市は内モンゴルの中でも北京に近い都市で、漢族とモンゴル民族が暮らしていて、草原もあり、砂漠もある地域です。その赤峰市の中心部にある赤峰学院へと配属されました。草原・砂漠と言っても中心部は栄え、高層ビルも多く欲しいものは簡単に手に入る環境でした。

 配属先は2つあり、赤峰学院とその附属中学でした。しかし、配属直後に附属中学担当の先生から「日中関係の影響から日本語科を廃止するかも知れない」と言われ、案の定2年目には学生は0になり、配属先は学院一つとなりました。

 外国語学科のビルの前の電光掲示板には日中関係のニュースが良く流れており、どうやってここで楽しく活動できるのか不安な日々が続きました。

 そんな中、数名の日本留学経験のある方々にしばらくの間よく食事に誘ってもらったり、買い物に付き合ってもらえることが相次いでありました。彼らは中国の奢る文化からか、私から一切お金を受け取ってくれませんでした。心配になって「申し訳ないので、今日は奢らせてください。」と申し出ると、「私が日本で留学していた時に、同じように日本人に親切にしてもらいました。ですから、いつか日本人にお返しがしたいと思っていました。」と同じような話を何度か別々の方からされました。

 ここから私の中国でのボランティア活動の考えが変わり、活動に熱が入るようになりました。ボランティアとはただ無給で学校に言われた授業内容を担当していれば良いのではなく、家族のような見返りを求めない優しさであると感じた私は、24時間365日がボランティア活動であると考えるようになりました。

 そこで、自分に設けたルールが二つあります。一つは授業で中国語を使わないこと。もう一つは平日の夜だろうが、日曜の早朝だろうが学生から連絡があれば必ず答えるということです。

 一つ目の授業で中国語を使わないことは、日本語教育で言う直接話法と呼ばれるもので、環境や学生によっていろいろ意見が分かれますが、会話の授業を任された日本人の私が学生と中国語で会話していると日本人として来た意味が無い。学生は中国人教師と日本語で会話をしないので、私が唯一の日本語を使う相手である。の2点から考えたものです。ここで中国語を使えば、笑いが取れたり、もっと分かりやすく説明が出来るのに、と感じることが多かったですが、学生たちが中国語に頼らず頑張って日本語を使う姿が可愛くて仕方なく、めげずに頑張れています。

 二つ目は、ボランティアならではであると感じます。給料をもらっているからこそ勤務時間外労働を嫌がったり、仕事であると強く感じるからこそ休日は休みたいと感じるのであって、家族のように皆と赤峰学院と言う場所で一緒に生活しているんだと思えば楽でした。こちらはそう思っていても、学生たちはやはり私を教師として見るので、残念ながら学生から誘われることはあまりありませんでしたが、家で餃子を作ったり、山登りをしたり、食堂でご飯を食べたり、色々なことをしました。

 この意識の変化から1年後、徐々に学生たちにも変化が出始めました。大きな変化では、ウェイシンで中国語を使わず話をしてくれるようになったこと、中国語で中国人の教師に質問した方が早いのにわざわざ日本語で文法について質問してくれるようになったこと、そして将来の進路・就職相談を持ちかけられるようになったことが挙げられます。

 給料をもらっていたら、仕事と割り切ってしまって、ここまで学生たちと関わった活動はできなかったように思います。これがボランティアの魅力なのでしょう。

 2年を通して私と関わった人は、主にもともと日本に興味のある日本語学科の学生や外国に興味のある学生たち、日本滞在経験がある先生たちであり、私が関わらなくても日本や日本人に対する考えは大きく変わらなかったと思います。一方、日中関係の影響から、今でも、活動外の中国人に私は日本人です、と自己紹介するのに躊躇してしまうことも事実です。そのため、配属先関係者以外の人々と交流・相互理解の機会を十分に持てたと言えませんが、日本人日本語教師ボランティアとしての活動はすることが出来たのではないかと満足しています。

 平成25年度 青年海外協力隊員 日本語教師 浦井智司

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 「人民網日本語版」2015年8月27日

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