エンゲル係数が30%を下回ると、未来の消費バージョンアップへの流れがうかがえるのと同時に、不均衡で不十分な発展という現実も浮かび上がってくる。人民日報が伝えた。
最近、エンゲル係数がまた人々の視野に入るようになった。国家発展改革委員会が作成した「2017年中国国民消費発展報告」の中で、2017年の全国のエンゲル係数は29.39%になり、中国は初めて国際連合の定義する豊かさのライン20~30%に突入したと指摘されたためだ。改革開放がスタートしてから40年が経ち、中国のエンゲル係数は大幅に低下した。これはどんな意味をもつのだろうか。
エンゲル係数が示すのは、総支出に占める食費の割合で、家庭や国家の豊かさを示す直感的で簡潔な目安とされている。支出の70%を食費以外に使えるということは、「以食為天」(食べることが何よりも重要)の中国人が食べること以外に使える富をより多く持つようになったことを意味する。こうした変化は人々の感性や考え方にも合致している。旅行にお金を惜しまない人が多くなり、高速鉄道や飛行機を利用することが当たり前になった。携帯電話の新機種が出れば、たちまち社会全体の話題になり、映画は上映前から全国民の期待を集めるようになり、教育・文化・娯楽消費が大幅に増加した。医療保険も硬直的需要になり、消費の範囲がますます広がり、消費のモデル転換・バージョンアップが目に見えて、実感できるものになった。「豊かになった」は共通認識だといえる。
消費構造の変化を通して、改革開放スタート以来40年間の経済発展の全体的水準がみえてくる。消費が物的消費からサービス消費へ広がり、オンラインからオンラインとオフラインの融合へと転換し、模倣型の消費から個性的な体験を重視する消費へと飛躍し、その背後には耐久消費財の供給の増加、価格の低下があり、サービス業の持続的発展があり、インターネット経済の押しとどめることができない新境地開拓の勢いがある。こうした要素からみえてくるのは、需要側と供給側の相互連動であり、ミクロレベルの暮らしの変化とマクロレベルの経済の巨大な変化との関係であり、実感できるのは、中国に今生じている消費バージョンアップと需要バージョンアップのプロセスだ。中国には世界最大の中所得クラスターが形成され、このクラスターは教育レベルも所得レベルも高く、質の高い製品やサービスをさらに追求しようとする。これが供給側の構造改革の推進に重大なチャンスをもたらした。
エンゲル係数の長所は簡潔さにあり、欠点もまた簡潔さにある。文化的・心理的な相違、都市と農村との二元構造、地域の発展のアンバランスさといった一連の複雑な影響要因があるため、1980年代以降、中国の学術界ではエンゲル係数を中国の状況に適しているかとの議論がなされるようになった。興味深いのは、食べることそのものだ。数年前に経済学者が挙げた例では、杭州市の若者は収入が増えるとよりグレードの高い食事をするようになり、エンゲル係数はかえって上昇した。広東省は経済発展レベルで全国トップクラスだが、エンゲル係数が高止まりしているのは、食べることを愛し、重視し、いろいろなものを味わえる環境にあるからだという。160年前の時代を生きた「食べることにそれほど詳しくない」ドイツの経済学者エンゲルスは、こうした文化的相違を計算に入れることができなかったと思われる。
よって中国の現実の中でこそ、エンゲル係数をより全面的に理解すべきだ。エンゲル係数の持続的低下は中国で農産品価格が長年低く抑えられていることと大きな関係がある。人々の「食費の割合低下」の背後には、食肉・卵・乳製品価格の相対的な安定があるが、これは回り回って農民にとってみれば、収入増加の相対的な難しさにつながる可能性がある。一連の貧困地域の家庭では、病気の時の医療費や子どもの教育費に多額の費用がかかる。報道によれば、「寧夏統計年鑑2017年」のデータに基づいて試算すると、16年の寧夏回族自治区の都市部のエンゲル係数はわずか24%、農村でも26.47%しかなく、この数字だけをみると「発展レベル」に達しているが、その背後には見えない貧困が隠れていることは明らかだ。よってエンゲル係数が30%を下回ることは、消費バージョンアップという未来の流れを意味すると同時に、不均衡で不十分な発展という現実も映し出しているといえる。
エンゲル係数の持続的な低下を前にして、中国の全体的発展の結果だと胸を張るのは当然のことだが、現実の複雑さは単純な経済の指数をしばしば超えるということも冷静に認識する必要がある。小康社会の全面的な完成の道のりでは、一人一人の達成感に照準を合わせることが、経済指数に注目するよりももっと国民の実感に近く、国民の実態を精確に反映することにつながるといえる。(編集KS)
「人民網日本語版」2018年4月23日
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