2018年5月3日  
 

中日対訳健康知恵袋 企画集 北京のお気に入り

政治|経済|社会|文化|中日
科学|写真|動画|対訳|企画
Apple新浪ツイッターFBLINE微信RSS
人民網日本語版>>カルチャー

AI時代の外国語教育とその課題〜卒業論文作成を中心として~ (2)

人民網日本語版 2018年05月03日10:11

3.技術革新と卒業論文

AI時代には、卒業論文の書き方が変わることは確かであるが、それがどのように変わるか考えるために、温故知新、IT時代になってどのように変化したかを振り返ってみる。1990年代前半までは、卒業論文は手書きで書いていたが、90年代半ばにはワープロが使用されるようになり、このワープロ使用機という移行期を経て90年代後半以降からはパソコンの急速な普及に伴い、インターネットを利用しつつ、パソコンで書く形式となり現在に至る。更に、2010年代以降は、スマートフォンやタブレットを使用して書く者も現れてきている。では、ITの普及前と、普及後での卒業論文の制作に生じた変化を見てみる。

3.1 IT(インターネット・パソコン)普及以前(1990年代前半以前)

短所

現在から見て、短所としては、手書きなので、修正や書き直しは、現在のようにこまめに行うことはできず、全て書き直さなければならないので、非常に大変であった。資料も、図書館に行き、検索コーナーで図書目録や図書カードを一枚ずつ探さなければならず、その本や論文を入手するのも膨大な時間と労力が大変かかり、苦労した。そして、タイトルで選び、入手した本や論文も自分の探していたものとは違う可能性が高く、徒労に終わる可能性が高かった。つまり、インターネットがある現在と比べれば、資料の充実度、網羅度などは、ずっと低かった。

長所

しかし、手書きは書き直しの時間と労力のコストが非常に高いので、論をよく組み立てからでないと書けない。熟考し、論を組み立ててから、傍証となる資料などを揃えた上で、書き始めて完成させるので、論文の構成の完成度は高く、構成力や集中力は鍛えられる。

また、構成を決めてから書き出し、また手で書くことも相俟って、引用はあれども、コピペを行うことはまずできなかった。総じて、卒業論文は大学生活の締めくくり、総決算として、今まで学んだ学問的なものに加えて日本語の文章能力、構想力などを最大限に発揮させる場として機能し、多くの大学において、広く必須のものとされてきた。

3.2 IT(インターネット・パソコン)普及以後(1990年代後半以降)

長所

パソコン入力なので、保存・編集がしやすい。コピーや、カット&ペーストなどが自由自在である。また、CNKI、CINII等資料の検索がデータベースに直接アクセス可能であり、求める資料が直ぐに大量に得られる。例えば、古典の名詞や語法の用例分析など、20年前までなら、その道の大家が10年掛けて調べるような資料が、あっという間により完全で漏れなく収集できてしまったり、図書館に行かずに自分のパソコンで論文や資料をダウンロードできたりするので、圧倒的に効率よく広く、深い資料までが収集できる。資料は電子データなので、引用が極めて容易である。

短所

しかし、コピー&ペーストが極めて容易なので、「コピペ問題」が深刻化している。また、パソコンを利用して手早く資料を集めて卒論を作成することが可能になった。また、インターネット上でのコミュニケーションが極めて容易かつ活発になったことにより、卒業論文を専門の業者に代行させることが容易になり、論文の代筆・代行を請け負う業者や人を探すことやマッチングも極めて容易になり、「卒業論文代行問題」が生まれ、教育現場の課題となっている。こうした卒業論文の代行を請け負う業者は以前から存在していたが、インターネットの普及により、卒論代行業者はネットにも広告を掲載するほどありふれた存在となった。代行業者が存在する背景として、学生の就職活動が長期化して卒論作成の時間を取り難くなったこと、大学側のチェック体制の不備、などが挙げられている。このような卒論代行業者は、日本のみならず海外でも多数存在する。

3.3 対策とIT化以降の卒論の位置付けの変化

対策として現在では、中国では、発覚したならば停学とするなど教育部で定め、学生の卒業論文の指導を毎週指導するようにし、指導冊子に指導内容を記録して、教員が見過ごすことのないようにしている。また、ソフトウェアにより、当該文章の中に、他者の論文やインターネット上からの「コピペ」がないか、チェックするように対応策がとられるようになってきている。2010年ごろから博士論文に対して、そのような検査が行われ、2015年前後より、修士論文でも行われるようになり、今年度2018年より学部の卒業論文でもそのようになってきた。

総じて卒業論文に取り組むことで、大学で学んだことを用いて自らの問題意識で物事を解明する力を身につけられ、また、卒業論文を書いたことがあれば、論理的に明解な長文を完成させることが今後も可能になる。説得力のある長文を書くことは、文章上のプレゼン能力を身につけることに等しい。インターネットが普及するにつれ、情報の入手が容易になり、たくさんの情報をどう整理して、まとめるか、むしろ文章を構成する知的能力がこれまで以上に求められるようになってきている。

4. AI(人工知能)の進展に伴う変化(2010年代後半以降)

人工知能(AI、artificial intelligence)とは、総合的な概念と技術であり、「人間の知的能力をコンピュータ上で実現する、様々な技術・ソフトウェア・コンピューターシステム」のことであるが、「知能とはそもそも何なのか」という問いが立てられている。これは、人間を基準として世の中を認識する、人間の可能性と限界を検証するという哲学的意味をも併せ持つ。2010年代後半より、リーズナブルなコストで大量の計算リソースが手に入るようになったことで、ビッグデータが出現し、企業が膨大なデータの活用に極めて強い関心を寄せて全世界的に民間企業主導で莫大な投資を行って人工知能に関する研究開発競争が展開されている。その結果、人工知能の第三次ブームが起きており、汎用人工知能(AGI)と技術的特異点の実現に関して企業間、更には2013年にアメリカで国家間でオバマ前大統領が脳研究プロジェクト「BRAIN Initiative」を発表し、中国でも2016年の第13次5カ年計画からAIを国家プロジェクトに位置づけたように、官民一体となった熾烈なAIの研究開発競争が推進されている。


【1】【2】【3】【4】

コメント

最新コメント