■分析-外来語の乱用や「翻訳されない外国語」の流行は、カルチャーギャップと翻訳家の人材不足による
外交学院英語学部の武波教授は、「これは、欧米文化の勢力の大きさと関係がある。総体的に見ると、この百年間、欧米から中国に入った文化のほうが多く、中国から輸出された文化は少ない」として、「グローバル化を背景に、国際間の交流が日増しに増加するとともに、触れる外国語の機会も自然と増加したことで、新しいものに敏感な人々が簡単に外来語を使用するようになった」と指摘する。
外語中文翻訳規範部際聯合会議専門家委員会の専門家・夏吉宣氏も同様の見方を示し、「改革開放初期に、欧米を盲目的に崇拝した一部の人が、自分の知識や文化の水準の高さを誇示したいがためにみだりに外来語を使用したことも、外来語の乱用を加速化させた」と指摘する。このほか、一部の科学技術や医薬方面の専門用語などは、緊急を要し、相当する適当な言葉がすぐに見つからない場合、外国語を直接的に引用する場合があり、それが結果的に「翻訳されない外国語」をそのまま使用する現象を作ってしまっている」と語る。
中国外文出版社発行事業局の王剛毅副局長は、「英語の省略形を使ったほうが手間が省けるという怠惰こそが、外来語の乱用の最も大きな要因だ」と率直な意見を述べる。
「優秀な翻訳者の人材不足もその要因の1つだ。外国語から中国語の翻訳は多いのに、中国語から外国語の翻訳は少ない。文化的に対等とは言えない」と語る武波教授は現在の翻訳界の人材の断層について、「端境期」であると指摘している。「以前は、有名な翻訳家といえば、傳雷、朱生豪、許淵沖、陸谷孫など一連の名前が次々と浮かんできたものだが、現在、誰の名前も思い浮かばない。鳳凰の毛や麒麟の角のごとく貴重な存在になってしまった」。これについて、復旦大学英語学部の朱績崧教授は、「法律、経済系の応用型の翻訳状況はまだましだが、文学や社会科学などの翻訳者の人材は今も不足している」と語る。
専門学者は、「翻訳家の人材不足の主な要因は、地位が低く、報酬が低いこと」という見方で一致している。外交学院英語学部の学生だった曹さんは、当時国内の著名な出版社でアルバイトをしていたが、あまりにも給与が悪かったため、大学卒業後は異なる業界に就職をしたのだという。武波教授は、「これまでに指導した学生の中で、最終的に専門的な翻訳家の道を歩んだ学生は3割程しかいない」と語る。
専門学者によると、良い翻訳家というのは、外来語の「濾過器」かつ「変換機」に相当するという。人材が流失することは、濾過器や変換機の働きが弱まったり、失われたりすることを示す。それによって、おのずと「翻訳されない外国語」が大量に出現することになるという。