【独占取材】莫言小説の翻訳者・吉田富夫氏(4)
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莫言氏の作品は人間の共通性に触れており、世界で受け入れられる
人民網:莫言氏の小説の翻訳本の中では、日本語版が最も多いのか?
断言できないが恐らくそうだろう。日本以外で、翻訳本が比較的多いのは米国だと思う。個人の理解では、日本の莫言氏の長編・短編小説の8割はすでに日本語に訳されており、これは魯迅以外の中国作家では見られない現象だ。魯迅はすべての作品が日本語に訳されているが、ほかの作家の場合、ごくわずかしかない。
人民網:中国と日本では状況が異なる中、中国語や中国文化をあまり理解していない一般的な日本人にとって、莫言氏の作品の魅力はどういったところにあると思うか?
日本の場合、莫言氏の作品の読者は恐らくほとんどが都市で育った人たちだが、莫言氏の作品が掘り下げているのは人の内面にあるものであり、通常なら心の奥深くに隠された欲望や理想といったものが、良いものも悪いものも含めすべて反映されている。こうした人間の内面にあるものは共通している。作品で描かれている農村の環境というのは、単なる外側の入り口に過ぎない。この入り口を通って、読者はあらゆる国の、あらゆる人の内心に潜む欲望と本性に触れることができる。この点に関しては、中国であろうと、日本であろうと、ほかのどの国であろうと同様であり、これが優れた文学作品の共通するところだ。もし優れた作品でなければ、このレベルまで達することはできないだろう。例えば魯迅の「阿Q正伝」の場合、語られるのは農村の日雇い労働者の物語であり、非常に辺鄙な田舎の、極めて特殊で特異な人物が描かれている。しかし、阿Qという人物像を通して人間の内面にある普遍的なものや人間の生存の秘密に触れることができる。同様に、莫言氏の素晴らしい小説を通して、人々は人間の深奥に隠されたものに触れることができる。これが恐らく今回莫言氏がノーベル文学賞を受賞した本質的な理由だろう。
人民網:日本の読者は日本語訳された莫言氏の作品にどんな反応を示しているか?
一般的な評論は先ほど話したとおりで、莫言氏の小説を通して人間の内面に秘められたものを浮き彫りにし、読者は莫言氏の作品を通して自己を再発見することができる。良い反応にはこういう意見が多い。
(編集MZ)
「人民網日本語版」2012年11月27日